2018年08月08日 21時11分
ナギサは僕みたいな頼りない夫を持っても愚痴ひとつこぼすこともない、我慢強いひとだった。だからなのだろうか。ナギサの身体を蝕む病が見つかったときには、すでに治療もできないくらいに手遅れだった。
猫効果…続きを見る
2018年08月08日 21時11分
ナギサは僕みたいな頼りない夫を持っても愚痴ひとつこぼすこともない、我慢強いひとだった。だからなのだろうか。ナギサの身体を蝕む病が見つかったときには、すでに治療もできないくらいに手遅れだった。
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2018年08月05日 21時00分
マスターに礼を言って喫茶店を後にした俺は、少しばかり寄り道をして愛しの探偵事務所へと帰って来た。もうすっかり太陽は沈みかけていて、窓を開けるとさわやかな風が入ってくる。
夏の太陽がぎらぎらと照りつけ…続きを見る
2018年08月01日 21時00分
マスターからソイととらさんの話を聞いて、俺は深く息をついた。波の音がどことなく切なく響く。
「そうか、そんなことがあったのか」
マスターは小さく頷くとコーヒーを飲んだ。俺も釣られてコーヒーを飲むと、…続きを見る
2018年07月29日 21時00分
どこかふてぶてしい面構えをした虎柄の猫が町を見回っている。
表通りからは見えない階段の裏、怪しいゴミ箱の影、置いてけぼりにされた段ボール箱の中。虎柄の彼、通称とらさんは怯えた猫がいそうなそんなところ…続きを見る
2018年07月28日 21時00分
「そりゃあもう。とらさんはナギサが拾った最後の猫でね。拾ったのは薄汚れた路地裏で僕もいたのだけど。とらさんは虐待でもされていたのか、サイズの合わない首輪をはめられて全身傷だらけで痩せ細り、今にも死に…続きを見る
2018年07月28日 17時30分
アコーディオンを嫌いにならずには済んだが、決して元の鞘に収まれたわけじゃない。ナギサに請われてしぶしぶ弾くことはあっても、これまでのように毎日熱心に練習したりはしなくなった。
その代わり僕はコーヒー…続きを見る
2018年07月27日 21時00分
マスターが来るまで手持ちぶさただったので、近寄ってきた猫をじゃらすことにした。いいねえ、ここの猫は素直にじゃらされてくれて。うちの小生意気なやつとは大違いだ。
無心になって猫をじゃらしていると、から…続きを見る
2018年07月25日 21時00分
僕とナギサの出会いは偶然だった。
若き日の僕はアコーディオンの奏者として売れるべく死に物狂いに練習を重ね、喫茶店や酒場を渡り歩いて演奏し、稼いだ小銭で糊口を凌いでいた。住む家もなく大変だったけれど充…続きを見る
2018年07月22日 21時00分
暑さにひいひい言いながら緩やかな岬の坂道を上ると、目的地にたどり着いた。猫喫茶らしく店の周りには木で組まれた猫の遊び場があり、数匹の猫が戯れている。
俺のことをちらりと見たが、すぐにぷいと顔を背けて…続きを見る
2018年07月21日 21時00分
無心になって地面を蹴り、逃げていく猫たちを追いかける。最初はひとかたまりになって逃げていた猫たちは、気がつくと散り散りになっていた。
私はとにかく虎柄の猫を逃がしてなるものかと、がむしゃらに食らいつ…続きを見る
2018年07月20日 21時00分
こうしてソイからとらさん探しを引き受けた俺とあずきは、炎天下のなか鈴ヶ浜まで調査に訪れたわけだ。
「浜辺にごろごろと転がってる岩に波がぶつかって弾ける音が鈴の音みたいだから、鈴ヶ浜って言うらしいぜ」
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2018年07月18日 21時00分
「私が飼っている猫、とらさんを探してほしいんです。もう3日も散歩から帰って来なくて」
よっぽどとらさんが心配なのか、そう言うソイの目は不安げに揺れていた。
泣き出されては困るぞとあずきを見るも、自分…続きを見る
2018年07月16日 21時00分
「それで、お嬢ちゃんはなんの依頼があって来たんだい」
「その呼び方やめてください。あと口調も子ども扱いされているようで不愉快です」
あらまあ、なるたけ優しい口調で言ったんだが逆効果だったか。カフェオ…続きを見る
2018年07月15日 21時00分
照りつける太陽、はしゃぐ声、潮騒の音、夏の海ほどひとのこころを浮き足立たせるのはあるまい。
「これで手にはキンキンに冷えたビール、隣にビキニの美女でもいれば言うことなしなんだが」
俺の手には海水浴に…続きを見る