みそ(業務用)の日記

2018年07月18日 21時00分

微発酵探偵ミソーン 第三発酵

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「私が飼っている猫、とらさんを探してほしいんです。もう3日も散歩から帰って来なくて」
よっぽどとらさんが心配なのか、そう言うソイの目は不安げに揺れていた。
泣き出されては困るぞとあずきを見るも、自分がにらんだ通り依頼が猫探しだったからって、たいそうご満悦な顔をしてやがる。これは俺が話を聞くしかないか。
「とらさんかい、なんだか渋い名前だな」
「虎みたいに黄色と黒のしましま模様をしているんです。岬の猫喫茶からもらってきた猫で、名前をつけたのは私じゃなくてマスターです」
「岬の猫喫茶?」
なんだそりゃ、聞いたことないぞ。
「あら、ミソーン。探偵のくせにそんなことも知らないの」
あずきが得意げに言うには、岬の猫喫茶は鈴ヶ浜という浜辺の岬にある喫茶店で、マスターが大の猫好きらしい。捨て猫を拾って店の看板猫にする一方、マスターのお眼鏡に叶ったひとには猫を託すこともあるそうだ。
「へぇ、そいつは粋なひともいるもんだな」
「そうです、マスターはミソーンさんと違って粋で渋くて格好いいんです」
「確かに猫界でも、マスターは人間にしておくにはもったいないナイスミドルと評判ね。ミソーンと違って」
やれやれ、これでもいぶし銀の魅力があるつもりなんだがねえ。お子さまとお猫さまにはわからないか。
「そいつがいい男なのはわかったがもうちっと、とらさんについて教えてくれねえか。好きな食べもんでも変な癖でも何でもいい、情報が多ければ多いほど探しやすくなるってもんだ」
「えっ!?あの、引き受けてくれるんですか」
「ここまで聞いちまったんだ、引き受けるさ」
とらさんの話をするソイの目からは、とらさんを心から心配しているのが伝わってきた。それを無下に帰すなんて俺の信条に反する。
「でも私、あんまりお金持っていなくて…」
「そうさな、無報酬で引き受けるほど俺もお人好しじゃない。だからこれは貸しってことにしておくさ」
「貸し?」
「ああ、ソイが大人になって探偵の力が必要になったときに、俺のとこに依頼に来てくれりゃいい。そんときに報酬をふんだくってやるからよ」
「そのときまでに廃業してなきゃいいけとね」
やれやれ、せっかくいい感じの話にまとまりそうだってのに、あずきが不吉なことを言いやがる。まっ、おかげでうつむくソイから目を逸らせることができたがな。
あずきと言い合っているうちに顔を上げたソイの目元は濡れていたが、ふてぶてしい猫みたいな雰囲気はすっかり戻っていた。

にゃかぴぽ

みそーーーん!

2018年07月18日 21時42分

みそ(業務用)

にゃかぴぽさん うそーんと同じ発音らしいです。

2018年07月18日 21時49分