2018年07月16日 21時00分
微発酵探偵ミソーン 第二発酵
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「それで、お嬢ちゃんはなんの依頼があって来たんだい」
「その呼び方やめてください。あと口調も子ども扱いされているようで不愉快です」
あらまあ、なるたけ優しい口調で言ったんだが逆効果だったか。カフェオレのおかげでゆるんだ態度が、またとげとげとしてきたぞ。
「そいつはすまなかった。しかしまだ名前も教えてもらっていないもんでね」
「ソイです」
「ソイちゃんか」
「ちゃんづけはやめてください」
「子どもじゃないんだから」
少女、ソイが言いそうなことを先回りして言うと、不愉快そうにそっぽを向かれちまった。やれやれ、どうにも子どもの扱いは苦手だぜ。
「ちょっとミソーン、真面目に話を聞いてあげなさいよ」
声とともに、テーブルの上にひらりとあずきが飛び乗った。散歩に出ていたはずなのに、いつの間に帰って来たんだか。
「これでも真面目に聞いてるつもりなんだがね」
「嘘をつきなさい。この間のやけにセクシーな依頼人の時は、身を乗り出さんばかりにして話を聞いてたじゃない」
「そりゃだってお前さん、あんな胸元が開いた服を着られちゃあ、身も心も乗り出そうってもんよ」
「不潔な。助平探偵ミソーンに改名した方がいいんじゃない」
これは旗色が悪そうだと思って目をそらすと、ソイが口をぽかんと開けていた。
「ねっ、猫が喋ってる!?」
そりゃ驚くよな。なんせ普通の猫は喋らない。
「あずき、面倒なことになるし、依頼人の前では喋らないんじゃなかったのか」
「そのつもりだったけど、この子からは猫のにおいがするんだもの。猫好きなひとに悪いひとはいないわ」
そんなもんかねえ。
「それになんだか、この子の依頼は猫がらみな気がするの。違うかしら」
「えっ!?は、はい!じゃなくて、いいえ…?ええと、とにかく、当たっています!」
現実を飲み込めず混乱するなか、不意にあずきに問いかけられたソイはあたふたと答えた。まったく、狙ってやってるのなら俺よりよっぽど性格が悪いぜ、このお猫様は。