みそ(鳩胸)
2019年02月11日 21時28分
自らの内に生じた残酷な衝動に戸惑うお兄ちゃんの前に、娘が現れたのは必然だったのだろうか。もしも娘と出会わなければ、彼はそれを解き放たず、押し殺し続けることができたかもしれない。けれどふたりは出会って…続きを見る
2019年02月06日 21時30分
お兄ちゃんは村の有力者のひとり息子で、なにひとつの不自由もなく暮らしていた。大人たちは彼の親の威光に頭を垂れ、子どもたちも親から言い含められているのか遠慮がちに彼に接した。お兄ちゃんには友と言えるも…続きを見る
2019年02月02日 20時56分
狭い村の中で娘の家の不幸な事情は知れ渡っていた。同情的な意見は少なく村人たちは関わりを避けるようにしながらも、次はどんな不幸があの家に訪れるのかさりげなく観察し聞き耳を立てていた。 自分の身に降りか…続きを見る
2019年01月28日 23時06分
ある日、娘が屈辱に堪えて卵を貰って帰ろうとすると叔父がにやにやと嫌らしい笑みを浮かべて引き止めた。警戒の色をあらわにする娘に構わず叔父はその手を荒く掴んだ。がさがさとした無骨な手の感触に肌が粟立つ。 …続きを見る
2019年01月27日 21時34分
日々の仕事の中でもとりわけ嫌だったのが、家畜を育てる叔父の家に卵を貰いに行くことだった。母の弟である叔父は、結婚に失敗し貧困に喘ぐ姉のことを馬鹿にしていた。 それは娘にも向かい、会うたびに侮蔑の言葉…続きを見る
2019年01月23日 22時06分
娘は様々な仕事を母から言いつけられた。井戸の水汲み、家の掃除、畑の草取り、畝作り。どれも疲れるし失敗をすれば母から棒で打たれる。だけどたまに上手くやれたところで、できて当たり前だと誉めてくれない。 …続きを見る
2019年01月22日 21時59分
それは平凡な農家に生まれた女の話。 女は母によく似た田舎臭い顔立ちをしていた。のっぺりとした鼻に小さな目。唇は厚ぼったくて野暮ったい。頭の回転も悪いのか返事は遅いし言葉もなにかしら足りない。用事を頼…続きを見る
2019年01月21日 22時34分
耳の奥にはまだ彼の物語る声が残っている。弦楽器のように細くてしなやかで、私の中心をたやすく疼かせるその声が。蝋燭のように頼りない明かりが照らすベッドの上で、彼はいくつもの寝物語を語った。 情事の後の…続きを見る