2019年01月27日 21時34分
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日々の仕事の中でもとりわけ嫌だったのが、家畜を育てる叔父の家に卵を貰いに行くことだった。母の弟である叔父は、結婚に失敗し貧困に喘ぐ姉のことを馬鹿にしていた。
それは娘にも向かい、会うたびに侮蔑の言葉を浴びせられた。その態度には親類へ向けてしかるべき情の欠片もなかった。
「また取りに来やがったのか」
舌打ちされるだけならまだいい。それは叔父の機嫌がいいときだ。虫の居所が悪いときには用事を押し付けられたり頭を小突かれたりする。卵のために土下座をさせられることもしばしばあった。額を押し付けた地面からは獣やその糞尿の臭いが立ち上ぼり吐き気がした。
どうしてこんな思いをしてまで卵をもらわなきゃいけないの。
そうは思っても母の言いつけは聞かねばならない。聞かなければどんな恐ろしい躾が待っているのか、想像するだけで身がすくんだ。