『アルジャーノンに花束を』 著者 ダニエル・キイス
知的障害のある主人公が脳の手術を受け、数ヶ月という短期間だけ天才になり、そこから知能が徐々に低下していくという物語。
周りの人々は最初主人公が賢くなり始めたことを喜ぶが、天才になるにつれて自分自身の無知無学さを叩きつけられ、嫉妬や嫌悪に変わっていってしまうのが読んでいて辛かったです。
主人公の感情自体はそのままなので、そういった扱いを受けて当然傷つき、苦悩します。
終盤に主人公の知能が低下していくのを自覚していく描写が悲しかったです。
悪いことはしていないのに他の人と違うというだけで酷い扱いを受けるという何とも心苦しい小説でした。
読書
『湿地』 著者 アーナルデュル・インドリダソン
アイスランドを舞台にした刑事物のミステリー小説。
終始ジメジメとした陰鬱な描写があるけど、表現はアッサリしていて文体も驚くほど読みやすく、ストーリーが無理なく入ってきます。
物語的には新鮮さはないものの、雰囲気作りがとても上手な良い小説でした。
著者曰く、なるべくアイスランドの生活様態を忠実に描写しようと意識しているようです。
「世にも奇妙な人体実験の歴史」
トレヴァー・ノートン著
タイトルだけ見ると他人に人体実験を施す超極悪な医師の話のようだが、これは自己実験をする医師達をとりあげている。
巷で問題になっている伝染病や奇病などで、それを治したいと考えるとても勇敢な医師達の記録となっている。
何故自分にするかというと、他人にはとてもさせられない(というのもあるとは思うが、多分)以上に、自分が一番実験内容、リスクを分かっており、どんな風な体内の変化をするか自分で体験してみたい、という好奇心からだ。
超痛がりの私には決して考えられない話である。
「世にも美しき数学者たちの日常」二宮敦人
数学者は孤独で変人で人嫌いーそんなイメージを少し?払拭した、数学に関わる人達へのインタビュー集。
彼らは数学で世界を見、数学を(言語のように)使って日常やこの世の謎を解き明かしている、という考え方をするらしい。
「写経ならぬ、写オイラーをすれば理解が深まって数学が楽しくなる」が、私的名言。
暇があったらやってみようかな、写オイラー。
ちなみに表紙のイラスト、よく見ると数学記号が散りばめられております。
中村航「デビクロシリーズ」
書店員の光は絵本作家になるのが夢だが、中々本を描けていない。しかし正体を隠して描き続けている「デビクロ通信」は、街の至る所にばらまき続けていた──。
彼の作品は小学生のどこか懐かしい記憶とリンクします。また、主人公や周りの職場チョイスもありふれてていいです(大体作品に1人は理系の人がいる)
恋愛ものというと過激な関係や性描写が入る作品が多いですが、そういうのに疲れた方におすすめ。
映画化されているようですが、改悪されている模様。
村山由佳 「おいしいコーヒーのいれ方シリーズ ありふれた祈り」
久々にナツイチフェアの小説を買いました。
(シリーズものの完結編だから、という理由な訳だが)
7年振り、だそうです。
まず思ったのが、とりあえず完結してよかったということです。
あとがきに贖罪と赦しの話が書いてあって、彼女のデビュー作である「天使の卵シリーズ」と重なりました。
でも、彼女の作品は今こっちの方向じゃなくなってしまったから今後どうなんだろうかと複雑な心境でしたが。
話がまとまらないのでこの辺で。
『夜にはずっと深い夜を』 著者 鳥居みゆき
お笑い芸人の鳥居みゆきが書いた短編小説集です。
登場人物が全員狂人で、妄想の中だけで生きているぶっ飛んだ価値観を持っています。
一つ一つの話が独立しているようでいて、内容が微妙に繋がっているという一風変わった小説でした。
鳥居みゆきのコントの世界観がそのまま文字になっているので、彼女のコントを見て笑ったことのある人はオススメです。
『あすも快晴』 著者 藤堂志津子
一本気で男っぽいOLの主人公が、結婚するまでの物語です。
人の悩みには全力で答え、曲がった事を見つけると迷わず首を突っ込み、それでいて好きな人の前では恐縮してしまう不器用な主人公のキャラが好きです。
この主人公と全く同じ性格の人と仕事をしていたことがあるので、個人的に読んでいてとても楽しかったです。
タイトルの通り、読んでいて晴れやかな気分になれる小説でした。
気分が落ち込んでいる人にオススメです。
『乳と卵』 著者 川上未映子
芥川賞受賞作品。
ネット上で見る限り、かなり評価が割れている作品です。
物語の内容は、主人公が豊胸手術を受けようと思っている姉から相談を受けるというものです。
思春期である姉の娘は口を利かず、紙に文章を書いて意思疎通を図るといった異様な雰囲気が漂う小説です。
正直、話の長いオバサンのような口語体で書かれていて読みにくい文章です。(ページ数は少ない)
でも、最後のシーンだけは今まで読んできた小説の中で一番記憶に強く残る異彩を放つ小説でした。
「印象に残った」という一点のみでここに紹介します。
個人的には女性にオススメの作品だと思います。
『群衆心理』 著者 ギュスターヴ・ル・ボン
社会心理学の発展に影響を及ぼした古典的な名著。
実例をもとに、群衆の特性について書かれています。
群衆は感情が拡張的で物事を軽々しく信じやすい性質、極端から極端の間を絶えず行き来するといったことが書かれていて、ネット上でよく見かける現代人の特徴がそのまま載っています。
120年以上も前の本で、当時まだ緻密な実験データが無かったにもかかわらず、ズバズバと言い当てられる怖い本です。
※ヒトラーが愛読していたと言われています。