米を麹菌、そして清酒酵母とともに発酵させると日本人にとって最も馴染みの深いお酒、日本酒さんになります。彼女の姉妹にはみりんさんがいますが、今回は日本酒さんのみの紹介とさせていただきます。

普段はおしとやかで透明感のある彼女ですが、彼女は様々な顔を持ちます。ピリリと辛口であったり、フルーティーで甘やかしであったりと。新しい彼女に出合うたびにドキドキしつつも、鮮やかにてごめにされてしまいます。その熟練の手口は実に見事なものです。

お猪口に注がれるときのとくとくという、どこか艶のある音。注いだときに立ち上るふくよかな香り。そして何よりも澄んでいて清楚な見た目。誘惑に耐えきれず、思わず口に含んだときのまろやかな味わい。それらを感じたらもう彼女の虜です。

女性はメイクで化けるといいますが、彼女は見た目だけでなく中身まで変わるので驚きです。ときには深く濁ったり、最近では泡のようにはじけたりと彼女の変化は止まることを知りません。時代に合わせる、猫のような柔軟さも彼女は兼ね備えています。

そんな彼女に振り回された経験のある方も多いのではないでしょうか。特にフルーティーで甘やかしな彼女には要注意です。気がついたらぐでんぐでんになるまで酔わされて、あられもない姿を晒すことになりかねません。
我を忘れてしまうくらいに魅力的な彼女は、ワインさんと並んで発酵界の高嶺の花です。ああ、一度でいいから彼女たちに酔わされてみたい。