朝はパン パンパパン

聞き覚えのある声にまさかと思って顔を向けると、青白い顔をした櫻井さんが立っていた。わたしと目が合い苦いものを食べたような顔をするも、すぐ表情を消した。
「あらまあ、ずいぶん顔色悪いね」
佐伯先生に促され櫻井さんは丸椅子に腰かけた。症状を聞かれ淡々と答えている。
ええ、どうしよどうしよ。まさかこんなところで会うなんて聞いてないよ。まだなにをどう話そうかも決めてないのに。ああでも、これは千載一遇のチャンスってやつなのかも。
「とりあえず熱計ろうか」
「でも、あの人がじろじろ見てくるので」
振り向いた佐伯先生と目が合うと、ベッドを隠す用のカーテンをしゃっと閉められてしまった。