朝はパン パンパパン

「私は寝てしまっていたのか」
若者が目覚めると不思議と満たされた感覚があった。身の内を探ってみると、それはなによりも求めていた満腹感であった。
重くのしかかっていた飢餓は消え去り、若者は生まれ変わったような清々しい気分に浸った。
「しかしなぜだ、食べ物なんてどこにも…」
ひとりごちてハッと気がついた。狭い小屋のどこを見ても、パンの姿がない。
「パンっ、どこにいった!?」
立ち上がった若者の足の裏に、ざらりとした感触がした。しゃがみこみ足元を見ると若者はすべてをさとった。
散らばるパンくずを潰さないようにそっとひろい集めると、若者は母と離れた赤子のように泣いた。