2018年12月24日 11時45分
天才発酵技師 緒方の日常
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世界に名を轟かせる天才発酵技師、緒方氏の朝は早い。冬であろうとも日が上る前のには目覚めてランニングをこなす。
その足取りは踊るように軽やかで、日々の激務による疲れなど微塵も見えない。およそ6キロの道のりなど文字通り朝飯前だ。
ランニングの折り返し地点には小高い丘がそびえ、そこで朝日を拝むのが緒方氏にとって何よりの栄養補給だという。
「だってそうだろう、どんな発酵食品だって、お日様には敵わないさ」
朝日に輝く緒方氏の笑顔に、スタッフ全員が心を奪われた。
ってちょっと待ってください。
「ん、なんだね。せっかく気分がノってきたというのに」
なんですかこの嘘八百を並べ立てたナレーションは。タイトルも天才発酵技師とか、誰もそんなこと言っていないでしょ。
「ほら、もしも私が情熱大陸やプロフェッショナルに出ることになったときのために、ナレーションを用意しておく必要があるだろ」
そんなもしもはあと三回生まれ直してもありませんよ。だいたいこんな嘘を並べ立ててどうするんですか。
毎朝遅刻ぎりぎりまで寝て、ランニングなんて1キロも走れば虫の息なくせして。
「ふっ、1キロも走れるわけないだろう」
ひと指し指を立ててカッコつけないでください。
「緒方ポーズと名付けよう。真似していいぞ」
指を一本ずつへし折ってやろうか。
「まあまあ、まだ続きがあるからそれを聞いて判断してくれたまへ」
ランニングから帰ると、緒方氏はコーヒーを淹れてバルコニーに出る。するとどこからともなく鳥たちが舞い降りてきた。
緒方氏がそっと指を伸ばすと、鳥は緒方氏の指先にとまる。やさしいひだまりができるその場所は、都会の片隅にあるオアシスのようだ。
満足いくまで鳥たちと戯れると、緒方氏は朝食の準備にとりかかる。
「朝ご飯は1日の活力だからね。それを抜くなんて考えられないよ」
こんがり焼いたトーストに野菜たっぷりのサラダ。湯気を立てるスープは昨晩仕込んだものだと言う。
緒方氏の食卓にはエレガントハーブとワンダフルフラワーが飾られ、
緒方さん、もうやめましょう。あなたの住むボロアパートにバルコニーなんてありません。鳥たちってアパートのすぐ裏にある、ごみ置き場に集まってくるカラスでしょう。朝になるとうるさくてかなわんと文句を言っていた。
「カラスだって立派な鳥だろう」
確かに鳥ですがイメージと違いすぎるでしょう。だいたいなんですか、オアシスって。西荻窪の最果てとまで言われる場末に住んでいるくせして。
「住めば都と言うではないか」
口癖のように引っ越したい、ああ美女の隣室に引っ越したい、と言っているのにですか。しかもあなた、朝ご飯にこだわりなんて欠片もないでしょ。
「そんなの食べる時間があったら睡眠をとるね!」
食卓のエレガントハーブにワンダフルフラワーってもしかしてあれですか。水をやり忘れて萎れた豆苗に、トイレの芳香剤についてきた造花。
「なんて華々しいのだろう」
痛々しい、どちらも捨ててしまいなさい。
「それでどうだろう、番組からオファーはくるかな」
へそで味噌汁が沸きます。
とことこ
緒方さんの(中の)ワンダフル・ワールド素敵すぎた
2018年12月24日 12時02分
みそ(鳩胸)
とことこさん 発酵方面にもこのくらい想像力を発揮してほしいものです。
2018年12月24日 12時27分