みそ(業務用)の日記

2017年08月26日 11時30分

誰が求めた発酵書評 その2

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自分をグズだと思い自信がもてずにいじめられている少女・耀子。
自分の居場所を見失い亡き夫を想い日々を過ごす未亡人・照子。
名家に産まれた重圧に耐えられず心も身体もぼろぼろになった少年・立海。
3人の出会いがきっかけとなり、それぞれの心をそして人生を動かしていきます。

時は昭和、舞台は奥峰生という地にある名家のお屋敷です。両親の死がきっかけで、耀子は祖父が働くお屋敷の片隅にある長屋に住むことになります。
お屋敷に来たばかりの耀子はきらびやかな着物姿の立海と出会い、この子は小さな神様なんじゃないか、と思います。しかし立海は神様なんかではなく、身体が弱く療養中のお屋敷のお坊ちゃまです。髭ダンスや面白いテレビ番組に憧れる、ひょうきんだけど優しい少年です。

立海は人懐こく、耀子が住む長屋にちょくちょくと訪れます。最初はそれを鬱陶しく思う耀子でしたが、天真爛漫な立海にだんだんと心を許していくようになります。
しかしそんな最中、ひょんなことから立海は耀子がいじめられている場面に遭遇してしまいます。身体の弱い立海が耀子を守るために、いじめっこに立ち向かう姿には思わず涙してしまいます。

そんな立海と耀子が心を通わせていく姿を見て、照子は亡き夫を思い出します。照子の夫は、立海の腹違いの兄にあたるとなかなか複雑です。
どこかに夫の面影を感じるけどやはり違う立海と、けなげに生きていこうとする耀子に、照子は凍りついていた心を溶かされていきます。

お屋敷で働く面々も個性的で優しい人たちばかりです。明るくころころとよく笑う料理人の千恵さん。冗談が大好きな小粋なドライバーの佐々木さん。そして、びしりと格好よく背筋の伸びた、立海と耀子の家庭教師の青井先生。

青井先生は豊かな教養のある、一本たしかな筋が通った女性です。ややキツい言動もありますが、どれもが立海や耀子のことを想っての、愛のあるものだとわかります。私も青井先生から教わりたいと思うくらい、とても素敵な方です。

いくら書いても私の稚拙な文章では、この作品のよさをお伝えしきることはできません。最後に、青井先生が耀子に教えたこの言葉で紹介を締めくくらせていただきます。

自立 かおをあげていきること
自律 うつくしくいきること