2017年10月15日 21時05分
お約束の花子 さりげないサポート編
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「ですからここで、和枝は院長に誘われるがままに不倫をするわけですね」
保健室を追い出された花子と健は大人しく授業を受けていた。現国の授業なのだが、題材がいささかおかしいのは気のせいだろうか。
妙な題材は置いておくとして、花子と健は相も変わらず机をくっつけていた。それもこれも健の教科書がまだ届いていないためである。
花子が流通ルートを操って、健の教科書の納品を遅らせたとの噂がまことしやかに囁かれているが、さすがにそれは無理があるだろう。
ちなみにこの噂の発信源はエレナである。ぶっ飛んだ方向に想像力、いや、妄想力が豊かだ。
エレナの妄想力の高さはいいとして、ふたりで教科書を読むためには当然、顔の距離が近づく。
健は異性との距離感が近いのか疎いのか、あまり意識せずに顔を近づけてくる。教科書を読むためなのだが、花子にはいささか刺激が強すぎる。
花子はもう健が気になって気になって、授業どころではなかった。普段からも集中しているとは言いがたいのだが。
「えぇー、では気が散っていそうな山本さん。この場面での和枝の心情を説明してください」
「は、はいっ!」
そんなところに先生からのご指名だ。欠片も話を聞いていなかった花子はプチパニックである。
「えぇと…」
困ったな、素直にわかりませんって謝るしかないかな。
視線をさ迷わせる花子の目に、健が自分のノートを指差しているのが目に入った。
これはもしや、さりげなく答えを教えてくれる展開なのでは!?
爽やかな笑顔を向ける健に、花子も安心したように微笑んで頷いた。現国の高山先生の目には、ふたりの間でなにかが通じあったかのように見えた。
これはもしや、さりげなく正解を教えてあげるお約束展開か。教師として勤めて四半世紀、ついに私もお約束の目撃者となるのか。
感無量な高山先生。彼は少女漫画と昼ドラのマニアである。
「ごめんなさい、わかりません!」
「ちょっと、ここは正解を教える展開じゃないの!?何を通じあわせた微笑みなのよ、もう!」
高山先生は怒るとなぜかオカマっぽくなる。おそらく少女漫画と昼ドラの影響だろう。
健のノートには『なんだろうね、僕にもわからないや』と書かれていた。
「あれは答えがわからないことを通じあわせた微笑みです」
ねーっ、ともう一度微笑みあうふたり。
「それを通じあわせるあんたたちがわかんないわよ!」
ちなみに正解は『夫と息子がいるのにという背徳感がありつつも、快楽に身を委ねたい』である。
みそ(鳩胸)
和枝の心情が伝わってきますよね。
2017年10月15日 22時09分