2017年10月13日 22時16分
お約束の花子 幻のお姫様抱っこ編
タグ: お約束の花子
「あれ、そういえば木村くんが私を保健室まで運んでくれたんだっけ?」
「うん、そうだよ」
「ごめんなさい、重かったでしょ私」
恥じらいつつ聞く花子。貪欲にお約束を求める以外は、けっこうな乙女である。
「なんのなんの。こう見えてお手玉で鍛えているからね」
健は腕を曲げて力持ちをアピールした。自称お手玉で鍛えたその腕は、細身のわりに引き締まっている。砲丸でも使ってお手玉をしているのだろうか。
「へえ、お手玉ってすごいんだね。それで、その…」
「ん、なに?」
「運んだって、どういう体勢で運んでくれたのかな?」
花子の脳裏には、頭と足を抱えて持ち上げられる、いわゆるお姫様抱っこがイメージされていた。
だとしたら覚えていられなかったことが非常に悔やまれる。となると、お約束ハンター花子のとる行動はひとつしかない。
「ちょ、ちょっと再現してもらっていいかな」
花子は、はあはあと荒い息づかいで摩訶不思議なお願いをした。お約束関連になると花子はちょっと頭が弱くなり、理性もけっこう失われる。
「うん、いいよ」
にこにことして頷く健。趣味がひとりじゃんけんの男は、たぶん心に余裕があるのだろう。細かいことは気にしないらしい。
ベッドから立ち上がり、お姫様抱っこを待つ花子はドキドキであった。
こんなにも立て続けにお約束が実現されるなんて、今日はお約束デーなのかしら!?
「よっと」
夢見心地な花子の体が、ひょいと健の肩に担がれた。まるで米俵でも担ぐかのようなその手際はまさに。
「ちょっと木村くん、これは人さらいの手口よ!?」
「いやあ、お手玉をしていたせいか、こうやって持つのが楽なもんで」
「いや、お手玉関係ないし!?」
花子が珍しく突っ込みとして機能したその瞬間、保健室の扉がガラリと開かれた。
「失礼いたしますわ、ってきゃあ!保健室でなんてハレンチな!不潔ですわ!」
扉を開けたのは金髪縱巻きロール、校則違反寸前のフリフリのレースをふんだんにあしらった制服を着た、絵に描いたようなお嬢様だった。
みそ(鳩胸)
突如あらわれた謎のお嬢様。果たして彼女の正体は!?
2017年10月13日 22時40分