みそ(鳩胸)の日記

2017年10月09日 21時00分

やれゆけ、味噌パンマン! 第三話「今度こそ味噌パンマン誕生 後編」

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「ざまあねえな、味噌野郎!惚れた女ひとり守れねえとは、所詮お前はその程度の味噌ってことだ!」
あざけるようなデスケチャップマンに味噌マンは言葉を失った。彼はもう、情すらも失ってしまったというのだろうか。
「無駄だよぉ、味噌マン。もうお前の薄っぺらい言葉なんてぇ、デスケチャップマンには届かねえよぉ」
心底愉快そうにナスマンが嗤っている。
「お前も肉の塊のもとへ送ってやるよ。せいぜい地獄で乳繰りあうことだなあ!」
大きく息を吸い込むデスケチャップマンを前にして、味噌マンにはもう動く気力など残っていなかった。
迫りくる紅い死を前にして、味噌マンは大切な人を守れるだけの、理不尽に立ち向かえるだけの力が欲しいと、ただ願った。
デスケチャップマンの殺人ケチャップを全身に浴びた味噌マンは、周囲に味噌を撒き散らすとピクリとも動かなくなった。
味噌マンの死体を見つめるデスケチャップマンの目には、なんの感情も宿っていなかった。

エントランスに動くものがいなくなるまで蹂躙の限りを尽くすと、デスケチャップマンたちは封鎖を突き破り王都へと繰り出そうとしていた。王都を紅く染め上げるために。
デスケチャップマンはなぜか最後にウインナーちゃんを見たいと思ったが、その死体はどこにもなかった。
死体の山に埋もれたのか、あるいは分別もつかないほどに滅茶苦茶にされたのか。
「なにをキョロキョロしてるんだぁ。さあぁ、楽しい楽しいケチャップパレードへと繰り出そうぜえぇ」
「ああ、そうだな」
ナスマンに促されコージーホールを後にするデスケチャップマンの目は、これからサーカスでも見にいく子どものようにキラキラと輝いていた。

何もない暗闇。圧倒的な静寂。
(そうか、僕は死んだのか)
最後に目に映ったのは血のようにドス黒い紅。
(なにも守れずに、僕は死んだのか)
ぱっくりと切り裂かれたウインナーちゃん。外道と成り果てたケチャップマン。
(僕に、僕に力があれば…)
『欲しいのか、力が』
闇の底から語りかけてくる声。
(ああ、欲しいさ)
『ならば我を求めよ』
不意に胸に浮かんだ言葉。その言葉を口にすれば、力を手にすることができる。
なぜだか味噌マンにはそれがわかった。
すでに死んだ味噌マンにためらう理由はなかった。たとえその力が、自らを蝕む毒であっても。
「僕に力をよこせ、デス麹!」

飛び散った味噌が意思をもったかのように集まりだし、味噌マンの紅く染まった体を包み込んだ。
味噌マンの体からもうもうと煙が立ち込め、じゅうじゅうとなにかが焼けるような音が聞こえる。
やがて音が収まると煙もかき消えて、そこには屈強な体つきをした、焦げ茶色のパンが立っていた。
そう、味噌マンは今ここに、味噌パンマンとして生まれ変わったのだ。呪われし力を、その身に秘めて。

僕が求めた力はやがて、僕を過酷な争いの日々へと突き進ませた。
僕が、いや僕たちが求めていたのは、誰もが手を取り合える平和な日々だったというのに。
僕が進むこの道の先に、果たしてそんな日々があるのだろうか。今はただ、ひたむきに進むしかない。