みそ(業務用)の日記

2019年01月13日 22時06分

ほころび

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特別なにかがあったわけじゃない。ただボタンをかけ違えたような、ささやかなずれがしばらく続いていた。
まず前より時間をすり合わせて会うことが少なくなった。僕の休みは不定期で、君の休みは土日祝日と暦通り。だいたい月に2、3回は僕に土日どちらかの休みがあって会えていた。でもそれだけでは物足りなくて、どちらかが休みの日に部屋に泊まったり、早めに仕事が終わった日には一緒に晩御飯を食べに行ったりしていた。
その物足りなくて会うことが徐々に減っていった。仕事の忙しさや友人、同僚との付き合いを理由にしていたが、それだけではないことはお互い薄々感じていたと思う。
次に会っても意見が合わないことが増えていった。デートする場所だったり観たい映画だったり食べるものだったり。これまでは譲り譲られしていたけど、そうすることがだんだん減っていった。
仲が深まって遠慮がなくなったと言えるのかもしれない。けれどこれはたぶんそういうのじゃなくて、お互いをおもんぱかる気持ちが減ったせいだ。
そして最後に、繋がっているそのときでも、お互いを見ていないような気がした。見つめあって愛してるとささやき、相手のすべてを貪り尽くすような、そんな激しい行為をしていた頃もあった。
新鮮だった愛情や快楽も肌を合わせるごとに色あせ、今では義務感のように誘い交わり果てて、終わればどことなく気まずくなって背中を向けて眠るだけ。もう僕たちは、目を見つめて愛してるとは言えなくなっていた。
それでも付き合いを続けているのは、ひとりになってしまうことに怯えているから。なにか用事がなくても連絡がとれてそばにいてくれる。そんなひとを失うのが怖かった。
だからセーターの裾が綻んでいくようにふたりを繋ぐものがほどけていっても、頼りない糸を手繰り寄せてしまう。そうしてもますます綻びは広がるだけだとわかっていても、そうせずにはいられない。
いつまでこの先に君がいるんだろうとびくびくしながら、糸を手繰り寄せる日々はこころを疲れさせていく。たぶん君も同じような思いをしている。
だからもう終わらせなくちゃならない。そしてそれはたぶん、ふたりでいることを始めた僕の役目だ。そうわかっていても、揺らぐこの気持ちはなんなのだろう。