2018年04月05日 02時11分
ケンカをした。
もう二度とてめぇでセガレを可愛がれないようにしてやる。
なんて、私が言ってしまったものだから。
私だって本気で言ったわけではないのに。
言ってしまった私が悪いのもわかってはいるけど。
でもそれにしたって、彼の言い草もあんまりにもひどくて。
鼻の穴を一つ増やしてやろう。そうすりゃ少しは頭も回るようになるんじゃねぇか?
どういうことよ!
私の頭が回ってないってこと?
うぅん、私の頭も身体も、いつだって地球と一緒に回ってる。
蟻だって、タンポポだって、夕飯のお豆腐だってそう。
みんな、私たちを放り出そうとするのと同じ手に、きつく抱き締められるみたいに、罵倒したのと同じ舌で甘く愛を囁かれるみたいに、早起きしなきゃいけないけどページをめくる手が止まらないみたいに、どうしようもなく地球と一緒にいるのに。
彼はそれを否定した。
この地上や、地中や水の中いたるところの万物から、私だけが隔絶されているのだと。
私だけが神の愛を受けられないのだと、彼はそう言ったの。
だから私、言ってやった。
あなたの本棚のいちばん下、右側の奥の列に何が並んでいるのか、私、今だって全部言えるのよ。
それからあなた、ときどき濡れた野良犬の臭いがするわ。
って。
彼ね、泣いてた。