みそ(鳩胸)の日記

2018年02月12日 11時56分

バレンタインの緒方さん

タグ: バレンタイン

明後日はバレンタインですね。この手のイベントに、あの年中発情期の緒方さんが黙っているはずもなく例年、チョコを求めてやたらと意識した格好や行動をします。
例えばこういった具合に。

緒方さんは大抵バレンタインの前日からそわそわと落ち着きをなくして、見た目も普段よりは女性を意識したものになります。方向性はおかしいですが、たぶん努力はしています。
普段はあっちへこっちへ跳ねている、無造作ヘアーと言うには無理があるボサボサの髪は、しっかりと撫で付けられた七三分けに。これがまた、整髪料でやたらとテカテカ黒光りして、胡散臭いことこの上ないです。あの虫を見たような不快感を見るものに与えます。
薄汚れてところどころにお醤油やカレーの染みが目立つ白衣も、パリッと糊がきいた新品を羽織り、なぜか蝶ネクタイを結びます。もちろん素肌に直接なので、より変態への階段を上るだけです。
他にも、どこで買ったのかと問い詰めたくなるようなネオンピンクの靴を履いたり、チョコを模した小物を使うようになります。そんな妙なものを、毎年どこで仕入れているのかは長年の謎です。

そのような涙ぐましい努力をする緒方さんが、チョコをもらえているかというとそんなことはなく、毎年ひそかに自分チョコを買って帰っているようです。
さぞや哀愁漂う背中でレジに並んでいることでしょう。想像するだけでおだやかな気持ちになりますね。
緒方さんは普通にしていればそれなりに見られる顔なのに、余計なことしかしないのでチョコをもらえないのだと思います。

ある年はこんなことをしていました。
白衣の背中に堂々たる板チョコをプリントした、後に板チョコ白衣と呼ばれる白衣を羽織り、「あぁ~、なんだか甘いものが食べたいなあ。明日あたりにもらえないかなあ。チョコ!っとでいいからもらえないかなあ」と大きすぎる一人言をのたまっていました。
そして女性職員によこしまな笑みを向けて、まぶたを痙攣させました。あれはおそらく甘いスマイルと、さりげないウインクのつもりだったのでしょう。
あのときの、緒方さんを見るかな子ちゃんの眼は忘れられません。呆れ憐れみ蔑みといった感情が複雑に混じりあい、最終的にはどうでもいいやと、すべてを放棄した晴れやかな笑顔になっていました。ある種の悟りを開いたのではないかと思います。
その年のチョコは言うまでもなくゼロでした。

こんなことをした年もありました。
バレンタイン当日のお昼休みになると、緒方さんは机の下をがたごそとあさり、大袈裟な声と動作であるものを取り出しました。
「おんやあ、なんだあ、このチョコレート柄の段ボールは!まるで、チョコを入れるのに、ぴったりじゃないかあ!まあいいや、とりあえず、私のデスクの上に、置いておこう!誰かが、間違えて、チョコを入れないと、いいけどなあ!」
聞くに耐えない棒読みで言い残すと、緒方さんはちらちらと後ろを振り返りつつ、食堂に行きました。奇妙な空気になったなか、かな子ちゃんがつかつかと緒方さんの机に近づいたので、皆は息を飲みました。
まさか、チョコを…!?
かな子ちゃんが懐に手を入れて取り出したのは、やたらと鋭そうな段ボールカッターでした。なんだとがっかりする皆をよそに、かな子ちゃんは華麗なカッター捌きでチョコ段ボールを切り裂き、組み立てました。
「こ、これは、太陽の塔!?」
チョコ段ボールの模様を利用して再現された、チョコレート色をした見事な太陽の塔がそこにそびえ立っていました。
称賛の拍手にペコリと頭を下げると、かな子ちゃんは上機嫌でランチに出掛けました。ちなみにこのときに作られた太陽の塔は、まだ飾られています。
食堂から戻った緒方さんは太陽の塔を見て「なるほど、あなたは私にとって太陽のような目映い存在です、という控えめながら情熱的な告白だな!」と幸せな解釈をしていました。いつも楽しそうでなによりです。
もちろんこの年のチョコもゼロでした。

果たして今年のバレンタインはどうなるのか、ゆるく見守りたいと思います。

ミラバケッソ

緒方さん…がんばって*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*

2018年02月12日 12時01分

みそ(鳩胸)

努力の方向さえ間違えなければ、といつも思います。

2018年02月12日 12時28分

みそ(鳩胸)

チロルチョコでも緒方さんは本気と解釈しますからね、迂闊に与えてはなりません。

2018年02月12日 12時44分