2018年01月06日 19時47分
こたつ 前編
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ゼミの飲み会を終えて、そのまま二次会になだれ込む組と、帰ったり思い思いの過ごし方をする組に別れ始めている今。
僕は意中の先輩の動向を、五感をフル活用して探っていた。先輩が二次会に行くなら二次会に、帰るようなら駅まで一緒に行こうという寸法だ。
先輩とは一言二言、言葉を交わしたくらいで僕の名前を覚えてくれているのかすら怪しいところだったが、僕は先輩にぞっこんだった。
声や顔立ちも素敵だったが、僕は何よりもその美しい足にこころを奪われた。
細身のジーンズを穿いたときに強調される、優美だけどエロチックな曲線を描く太股。スカートから覗く、はっとするほど白くしなやかなふくらはぎ。サンダルを履いたときに見える、誘うような細長い指先。
どこを取ってみても完璧としか言いようがない、僕の理想の足だった。
「ねえ、あなた」
「は、はいっ!」
先輩の足を思い出していた最中、当の本人から声をかけられて上ずった返事をしてしまった。
「二次会に行かないの?行くなら追いかけないと」
そう言って先輩が指差す先には、わいわいと賑やかに歩いていく集団がいた。カラオケにでも行くのだろう。
「先輩はどうするんですか?」
思いきって聞いてみると、先輩は目を丸くした。
「あたし?あたしは行かないよ。そんな気分じゃないし。早く帰ってこたつに入りたい」
「こたつ」
あほの子みたいにおうむ返しをする僕に、先輩は少しだけ笑った。そんな些細なことが僕にとってはたまらなく嬉しかった。
「そう、こたつ。珍しいものでもないでしょう」
「いや、あの、こう見えても南国生まれの南国育ちなので、こたつとは縁遠い人生を送ってきたのです」
何を言っているんだ僕は。南国生まれの南国育ちってバナナの紹介かよ。
変なやつと思われていやしないかと恐る恐る先輩を見ると、きょとんとした顔をしていた。
ああ、これはやってしまったな。これからも密かに先輩の足をひっそりと眺める毎日か、とそこいらの看板を見つめて思っていると大きな笑い声が聞こえた。
「あははっ、なにその言い方!昔の映画みたい!面白いね、君」
なんと大きな笑い声の主は先輩だった。驚くべきことに、目に大粒の涙まで浮かべて笑っている。
少しだけ親しみが増した君という呼び方に、僕のこころはスキップせんばかりに飛び跳ねた。
「よかったら人生初のこたつ、入ってみる?」
イタズラっぽく笑いながら言う先輩に僕は一も二もなく、こくこくと頷いた。その姿がおかしかったのか、先輩はまた小さく笑った。
こんなによく笑うひとだっただろうか、と思ったがそんなことはすぐにどうでもよくなった。
大海老天丼まそ
懐かしい、この感じ。むかしは若かったなぁ。あ、小雪ちゃんも続き楽しみにしてます!!
2018年01月06日 22時00分
みそ(鳩胸)
こそばゆくも甘酸っぱいですね。
小雪ちゃんは近々再開予定です。朝から夜に移行しようかと思います。
2018年01月06日 22時08分