みそ(業務用)の日記

2018年01月04日 10時10分

本紹介 蒼天見ゆ

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今回、紹介させていただく本はこちら、葉室麟さんの蒼天見ゆです。

時は明治、仇討ちが禁止されて罪とされるようになった世の中で、日本史上最後の仇討ちに挑む臼井六郎の姿を描いた本です。
とある夜に無頼の徒たちによって、六郎は父である亘理と、母である清を殺されてしまいます。彼らは時勢を読む能力に長けて、これからの世に重宝され出世するであろう亘理を妬み、難癖つけて凶行に走ったのでした。

義もなく凶行を犯した彼らは当然罰せられるべきでしたが、藩は彼らを無罪放免としてなんの罰も与えませんでした。
夜襲をしかけて、さらには女性にまで手をかけるという、武士にあるまじき行為であったにも関わらずなんのお咎めもなし。
父母を手にかけたものたちが、誰にも裁かれないのならば自らの手で。こうして六郎は復讐を誓います。

蒼天を見よ。
いかなる苦労があろうとも、いつか頭の上には青い空が広がる。それを忘れるな。
父、亘理の教えを胸に六郎は仇がいる東京へと旅立ちます。自らの手で父母の仇を討つことで蒼天が見えると信じて。

復讐を誓う六郎ですが、何度も迷い、様々な人から教えを受けます。そうして葛藤しながらも、成長していく六郎の姿がとても美しいです。ひたむきに何かを成そうとする人の生きざまは、見ていて感動します。
また、復讐を英雄譚のように美化せず、真っ直ぐに向き合って考える六郎の誠実さに胸を打たれました。
読んだひとのこころになにかを残す名作です。