2017年11月23日 22時00分
(祝) 戦闘力900記念 革命のコッペパン 後編
タグ: 革命のコッペパン
「よおよお、おめえら相も変わらずにダセえパンだらけだなあ」
カレーパン族の横暴はコッペパンに対してだけではなく、他のパンにも及んでいた。
我が物顔でパン王国の大通りを並んで歩くカレーパンたちに、文句を言うパンはどこにもいなかった。
「サクッと揚がってスパイシーな俺たち、カレーパン様に敵うパンはいないようだなあ。ヒャハハハハ!」
「おっと、そこまでにしときな。スパイシーヤンキーども」
「あん、なんだおめえらは」
カレーパンたちの前に立ちはだかる、コペ夫率いるコッペパンたち。彼らの目には揺るがぬ自信が溢れていた。
「おんやあ、誰かと思ったら無味無臭のコッペパンさんたちじゃないですかあ。田舎くせえパンはおとなしく引っ込んでろよ!」
サックリと揚がった身体で突っ込んでくるカレーパンを、コペ夫は腕組みして待ち構えた。
それを見た誰もが無惨に潰れたコペ夫の姿を想像した。
「ぐおっ!な、なんだってんだよ!」
しかし大衆の予想を裏切り、そこには無様に地面に転がるカレーパンと、堂々と立つコペ夫の姿があった。
「どういうこと、カレーパンとコッペパンのパン力はアリとカマキリくらいの差があるはずよ」
「コペ夫のパン力がコッペパンにしてはずば抜けていても、コッペパンがカレーパンに勝てる道理なんてないのに」
「いや、待てみんな。コペ夫の背中を見てみろ!」
コペ夫の背中には深々とした切れ込みが入れられ、そこにはサックリ揚がったコロッケが差し込まれていた。
「あいつまさか、自らの身体に切れ込みを入れて、コロッケと合体したっていうのか!?それでカレーパンと同等の、いやそれ以上のパン力を得たっていうのか!」
「まさに肉を切らせて骨を断つ。なんていう度胸だ、チキショーめ!」
「コペ夫だけじゃないわ!他のコッペパンたちも見て!」
コペ夫とともにあらわれたコッペパンたちの背中にも深々とした切れ込みがあり、あんバター、ジャムマーガリン、焼きそば、タマゴサラダなど様々な具が詰め込まれていた。
「薄皮一枚、具だくさんだぜ」
騒ぐパンたちに、コペ夫たちは自慢の具を見せつけた。ギリギリで持ちこたえている、今にも破れそうな薄皮一枚。
「何て奴等だ、下手をすると身体が裂けてしまうというのに」
「限界までパン力を引き上げた、っていうの」
「チキショー、命をかけたその決意、泣かせるじゃねえか」
コッペパンコールが巻き起こり、カレーパンたちに焦りが広がった。
「くそ、あいつら調子に乗りやがって!」
「ええい、黙れ!黙らねえか、田舎パンども!」
「静まれ野郎ども!」
ヤケになり突撃しようとするカレーパンたちを、威厳のある声が制止した。
「カレ郎さん!」
「カレ郎さんが来てくれたなら、コッペパンなんぞイチコロだぜ!」
「やっちゃってください、カレ郎さん!」
「バカ野郎!お前ら、あのコッペパンたちの姿を見て何も思わねえのか!?」
薄皮一枚で身体を支えて、今にも破れそうなほど具だくさんなコッペパンたち。その姿は命の灯火を燃やし尽くしているかのようだった。
「オレたちカレーパンは生まれながらのパン力の高さをひけらかして、威張り散らしてきた。だがあいつらコッペパンはどうだ。命がけでパン力を高めて、オレたちカレーパンを見事に越えやがった。そんな奴等になんの努力もしてないオレたちが敵う道理なんてねえよ。カレーパンの、完敗だ」
カレ郎の言葉に異を唱える者はなく、カレーパンたちは深く反省した。
「さあ、オレたちの負けだ、コッペパン。煮るなり焼くなり好きにしな。おっと、二度揚げはなしだぜ」
カレ郎がどかりと胡座をかいて目を瞑ると、他のカレーパンたちもそれにならった。その様はまるで最後を覚悟した武士のようだ。
「おいおい、カレ郎。俺たちはお前らカレーパンをどうこうするつもりはねえよ。ただ他のパンの価値も認めてくれれば、それでいいんだ」
「コペ夫…!」
「ほら、立てよカレ郎。これからは一緒にパン界を盛り上げていこうぜ!」
「ああ、ああ!ありがとうな、コペ夫!お前らの懐の深さに感謝するぜ」
「おっと、それを言うなら切れ込みの深さ、だろ?」
「はは、ちげえねえや!」
手をとりあい爽やかに笑う二人の姿に、その場に居合わせたパンたちは、パン界の明るい未来を垣間見たた。