2017年11月10日 22時09分
アルバイターひろし その1 新たなる珍客
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俺の名はひろし。ちょっといい年をしたアルバイターだ。フリーター、なんぞではなく、アルバイター。そこを間違えないように。
ひろしというとクレヨンなにがしのお父さんを想像する人も多いかもしれないが、俺には妻も子どももいない。守るべきものなんて持たずに身軽に生きる。それが俺の信条だ。
決して経済的な理由とか、定職に就けていないからとかそんな理由ではない。誤解しないように。
俺は今、深夜のコンビニでアルバイトをしている。あくまでも次へのステップアップのためだ。コンビニバイトで一生を終えるつもりなどない。俺はもっとビッグになれるはずだ。
そんな俺の輝かしい人生設計はともかくとして、このコンビニがまた妙な常連客が多い。タバコの銘柄を独自の暗号で伝えてくるおじさんや、午後11時ぴったりに来店しては雑誌コーナーにこれまたぴったり1時間居座り、日付がかわるとともに帰るOL風の女。
他にもいるが例をあげたらきりがない。
そして今、また妙な客が来店してきた。
なるべく目を会わせないで「らっしゃっせ~」と我ながら歓迎しているのか、していないのかよくわからない挨拶をする。
客は俺に注意を払わず、ご機嫌そうにぷりぷりと尻を揺らしながらスイーツコーナーへと向かっていった。俺はついその後ろ姿を眺めてしまった。
これは初めて見る人種かもしれない。
鍛え抜かれた背筋が、やけにピッチリとしたタンクトップ越しにもわかる。下はギリギリ尻肉が見えない程度の超際どいホットパンツだ。こちらも例によって溢れんばかりの筋肉のせいでぱっつんぱっつん。というか、男が履くのもホットパンツっていうのか。
そんないらぬ疑問を抱いていると、ふいにピッチリぱっつん男が振り向いてきた。
ゴリラかと見紛うほどの濃い顔をけばけばしいメイクが彩り、見る者に思わずお尻の危機を抱かせる顔をしている。
ばっちり目が合うと、口角を吊り上げてのしのしとこちらに近寄ってきた。あれは笑っているのだろうか、それとも威嚇なのだろうか。ゴリラ博士ではない俺にはわからなかった。
レジ越しであるからそうそう妙なことはできないはずだが、思わず尻をきゅっと引き締めてしまう。これが防衛本能というやつだろうか。
「ねえん、あなた。私にピッタリなオススメのスイ~ツはあるかしら」
しなを作ったしゃがれ声とともにレジ台に手をつき、ぐいっと身体を突き出してくる。香水でもつけているのか、いい匂いがふわりと香ってきて少し腹立たしい。若い姉ちゃんなら大歓迎だが、これでは貞操の危機を覚えるだけだ。
「新発売のイチゴのミルフィーユなどいかがでしょう」
俺は恐怖に震える声でなんとか答えた。蛇に睨まれた蛙はこんな気持ちなのかもしれない。
「あらん、私をスイーツストロベリーなんて嬉しいこと言ってくれるじゃない。見所あるわね、ア・ナ・タ」
そんなことは神に誓って言っていないし、下半身に熱い視線を送るのはやめてくれ。
「気に入ったわ、あなた。またきてあげる。それまでおイタしたらダメダメよ」
夢にまで見そうなウインクと、ちょっといい匂いを残して彼(彼女?)は去っていった。また1人、妙な常連客が増えてしまったかもしれない。
米倉恵蔵@エロセクハラミータンスキーな部長
常連ほどいいお客はないですよw
2017年11月10日 22時11分
みそ(鳩胸)
米倉さん
常連さんはありがたいですよね。
2017年11月10日 22時36分
みそ(鳩胸)
ちょうどいいさん
ひろしも四苦八苦しているようです。
2017年11月10日 22時37分