2017年10月31日 21時32分
パン忍者「二の巻 ハロウィンに忍ぶ影」
タグ: パン忍者
ハロウィンに浮かれ、コスプレをした若者たちが跳梁跋扈する渋谷。その中を志穂は足早に通り抜けようとしていた。
無論、志穂はハロウィンになんて興味がないし、人混みだって苦手だ。たまたま用事があって渋谷界隈にいたのだが、予想外に長引いてしまいこの狂乱に巻き込まれてしまった。
早く帰ってあたたかいお風呂に入りたい。
その一心で足早に人混みを進む志穂の前に、ビールの缶が転がってきた。
缶が転がってきた方を見ると、ちょっとした広場のようなところに若者たちがたむろし、我が物顔で酒を飲みあたりにゴミを散らかし騒いでいた。
それを咎めるものは無礼講となった街には誰もいなかった。大多数になると途端に強気になり、最低限のモラルすら忘れる。
誰があんたたちが散らかしたゴミを片付けると思ってるのよ!片付けくらいしなさい!
思うだけで声には出せずに、歯がゆい思いをする志穂。せめてと思い志穂が缶を拾おうとすると、肌色の触手のようなものがしゅるりと缶に巻き付き、ゴミ箱へと投げ入れた。
「んっ?おい、なんだこれ!」
「絡み付いてきやがる!」
「離せ!離せよちくしょう!」
それは続いて騒いでいた若者たちへと絡み付き、その身体を高々と宙へと持ち上げた。
「おい、なんだよあれ!」
「すげえ、なんのパフォーマンスだよ」
「あはは、ウケる!」
宙吊りにされパニックになる若者たちを、絶え間無くフラッシュが照らした。渋谷の空に人が浮かぶその様は、ある種の前衛芸術のようにも見える。
若者たちを宙に吊るす肌色の触手。それを見て志穂は呟いた。
「これは、まさか、パン忍術 生地触手…!?」
宙吊りにされた若者たちは、生地触手により勢いよくゴミ箱へと叩き込まれた。それを見た者たちは馬鹿みたいに歓声をあげる。
我が身にも降りかかりうる災難だというのに、呑気なものだ。
「パン忍者清正、あなたは…」
続く志穂の言葉は、若者たちのばか騒ぎする声にかき消された。
みそ(鳩胸)
彼は忍んでいますからね、なかなか姿を現しません。
2017年10月31日 22時18分