2017年10月01日 15時05分
若き日の洗濯バサミ
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洗濯バサミを見ると、私はふとH君のことを思い出す。
H君と私は中学三年生という受験も押し迫り、緊張感の漂う時期に初めて同じクラスになった。席替えでたまたま彼と近くになり話してみると、同じゲームにハマっていることがわかり意気投合した。
それ以来もう一人の友人Y君もあわせた三人でよく遊ぶようになった。
ハマっていた対戦ゲームに飽きてくると、私たちは他に何かないものかと新しい刺激を求め始めた。あーでもない、こーでもないと不毛な議論が繰り広げられる中、Y君がこんなことを言い出した。
「そういえばテレビで見たんだけどさ、乳首を紐で結んだ洗濯バサミで挟んで、紐を思いっきり引っ張って洗濯バサミをバチンて外すやつ面白そうだったな」
無駄に行動力がある私たちはすぐさま道具を揃えると、早速試してみた。
バチンと紐を引っ張られたときにリアクションしたら負け、というルールを作り私たちは乳首バサミゲームを開始した。
3、4回ならなんとか耐えられたが、私とY君は4回目辺りで痛い痛いと根を上げた。乳首もすっかり赤くなり、痛々しかった。
今にして思うとあれはけっこういい洗濯バサミだったようで、挟む力がかなり強かった。遊びに使ってはならないタイプの洗濯バサミだ。
軟弱な我々と違って、H君は謎の強さを発揮した。もう勝負も彼の勝ちだというのに、なぜかさらなら乳首バサミを望んだ。
真顔で「もっと洗濯バサミで挟んでくれ」と言われたのはあのときが初めてで、おそらくあれが最後になるだろう。
5回6回と繰り返すごとに赤さを増す彼の乳首。普段は物静かで表情がわかりにくいH君が、かすかに息をあらげていた。
痛みを我慢してか、それとも別の要因か。今でもわからないしわかりたくもない。
「もうやめろって、血が出そうだぞ」
「そうだよ、このままじゃ乳首取れるって」
私もY君もさすがにH君の乳首が心配になり止めたが、彼は不満げだった。
「血が出ようが、取れようがかまわん。男の乳首なんぞ無用の長物だ」
彼は男の乳首になにか恨み辛みでもあったのだろうか。
どこまで本気かわからないH君をなんとかなだめて、それ以来あの遊びは封印された。
その後しばらく、私たちの間でH君は鉄乳首と呼ばれるようになった。彼とはまだたまに連絡を取り合う仲だが、性癖は正常なのか少し心配だ。
みそ(鳩胸)
ありがとうございます。一番自信があったところです。
2017年10月01日 16時12分