2017年09月26日 21時57分
発酵友人その9 ワインさん
葡萄が旬の季節であるうちに書かねばと思っているうちに、気がつけばもう9月も終わりそうですね。夏と秋の境目であるこの季節に、私はワインさんと出会いました。
葡萄を発酵させた、さまざまな色に個性をもつ彼女。濃厚で華やかな香りの赤ワインさんに、爽やかですっきりとした香りの白ワインさん。
どれも個性的で魅力的です。
私がワインさんと出会ったのは発酵留学したフランスでした。花の都で彼女を見かけたそのときから、私は彼女に魅了されていました。
まだあどけなさを残した薄紅色をしたそのすがた。しかし、ふとしたときに漂う複雑な果実の香り。ギャップというやつにやられたのでしょう。
彼女の奥深くにあるものはいったいなんなのか。知りたいと思ったときには、私はもう彼女に恋をしていました。
彼女も遠い東の果てから来た私に興味を抱いてくれたらしく、私たちはお互いについて多くを語り合いました。
発酵遍歴。保存するのに最適な温度に湿度。好きな酵母菌や麹菌。
話の種はつきませんでした。私たちはお互いのことを深く理解し、尊敬しあうことができました。
このままフランスに残るのも、選択肢のひとつなのでは。なんならこのままワインさんとマリアージュすることも、男として視野に入れなければなるまい。
私はそう思い、発酵技師の緒方さんと話し合いました。どうしても残りたいのならば、と緒方さんになんとか了承をいただけて私は浮かれました。
手足があったらスキップでもしていたことでしょう。
喜び勇んでワインさんに報告しようとすると、ワインさんのとなりには白い紳士が寄り添っていました。
チーズくん。
私は花の都の雰囲気に酔わされて、大事なことを忘れていました。ワインさんにはもうとっくに、マリアージュする相手がいたことを。
田舎臭い私なんかではなく、洗練された都会の紳士であるチーズくん。
彼の隣で微笑む彼女は、まるでなんの苦しみも知らないかのように無垢で幸せそうで、私の入り込む余地なんて大豆ひとつぶんもないのだと思い知らされました。
とぼとぼと戻って来た私になにも聞かずにただ「おかえり」と言ってくれた緒方さんに、私はどれだけ救われたことでしょう。
みそ(鳩胸)
兄弟に近い間柄と言ってもいい彼とまさかの…!?
2017年09月26日 22時48分