2017年09月24日 15時00分
3時の発酵劇場 ひまわり
タグ: ひまわり
「君はひまわりのように僕を元気づけてくれるね」
屈託のない笑顔でそう言ってくれたあなた。私はそんなあなたの言葉に照れて、きっとチューリップのように赤くなっていたことでしょう。
明るいだけが取り柄の私にそんな言葉をくれたのはあなたが初めてでした。あまりにもなれた感じで言うから、これまでに何人の女性にそんなことを言ってきたの、とすねてあなたをこまらせましたね。
違うんだと不器用に言葉をつむぐあなたはとてもかわいくて、いとおしかったです。こまった顔も好きでした。
あなたは私がいくらトゲのあることを言ってこまらせても、いつも誠実に、ひたむきに、そしておだやかに言葉を返してくれましたね。
だから私はいつだって、あなたがそばにいてくれる、とこころ安らかに日々を過ごすことができました。
私がひまわりなら、私に安らぎを与えてくれるあなたはひだまりです。なによりもやさしく、あたたかなひだまり。
私のからだが思うように動かせなくなっていってもあなたは変わらず、あたたかなひだまりであり続けてくれましたね。
ゆるやかに、けれど確実に蝕まれていくからだがこわくて不安でしかたなくなり、あなたにきつく当たってしまうこともありました。
あなたも私と同じような黒い思いを胸に抱えていただろうに、それでもあなたはやわらかく受けとめてくれましたね。
泣きじゃくる私を寝かしつけたあと、ひっそりと夜に紛れるようにして泣いていたあなたの姿を私は知っています。
あなたはがまん強い人でしたからね。そしてなによりも、誰かのことを大切にしようとする人。
そんなあなたに愛されて、見送ってもらえる私は誰よりもしあわせものです。さいごだもの、あなたをひとりじめしてもバチは当たらないでしょう。
私を見送ったらあなたは他の誰かを、あなたのひだまりにいれてあげてください。できれば私の知らないひとがいいのだけれど、それは少しわがままでしょうか。
いつものように、しょうがないなあ、とこまったように笑ってゆるしてください。
あなたは誰かといっしょに生きるべき人です。私をひまわりにしてくれたみたいに、誰かを愛し、家族を築いてください。
やさしくて、けれどそのぶんだけさみしがりやさんなあなたは、誰かといっしょに生きてください。
あなたが作りだすひだまりは、洗い立てのシーツを広げるようにふわりと大きくなって、多くの人を幸せにできます。
あなたのひだまりにいることが、これまで生きてきたなかでいちばん幸せだった私がいうのだから間違いないです。
そしていつか私なんか忘れてしまうくらいに、幸せになってください。あなたが幸せに生きてくれることが、私のなによりものおねがいです。
ああ、だけどそうは言っても、あなたに忘れられては少しばかり、いえ、とてもとてもさみしいです。私を忘れたあなたを想像しただけで、すごくせつなくて、むねが苦しくなります。
願わくば、どうかあなたのひだまりの片隅で、ひっそりと私を咲かせ続けてください。あなたの幸せを陰らせないくらいに、ひっそりと。
それが私の、ほんとうにさいごのわがままです。
だれよりも、なによりも、あなたを愛しています。