これは大学時代に霊感があるという先輩から聞いた話です。

その先輩は自転車で大学まで通っていました。
彼はiPodで音楽を聴きながら通学していて、その日もなにかをけっこうな音量で聴いていたらしいです。
ふと前方の電柱に、何か妙な気配がしました。
よく見ると電柱の足下に髪の長い女性がうずくまっていました。夏だというのに真っ黒のワンピース。
先輩は一目見て幽霊だと気がついたそうです。
先輩はよくこういう類いの幽霊を見ていたので、見て見ぬふりをすれば大丈夫だろう、となるべく離れて通り抜けようとしました。
なにも起こるなよ、と念じながら女の脇を抜けると、ほっと一息つけました。

よかったよかった、と安心して音楽に耳を傾けながら大学への道を急ごうとすると、
なんの音も気配もなく、目の前に、女の幽霊が表れました。
そしてイヤホンで押さえられているはずの耳を通り抜けて、

ねえ、見えてるんでしょ

と聞こえてきたそうです。それ以来、先輩はその道を使えないと愚痴っていました。