2016年12月03日 22時19分
【朗読 銀河万丈『ごんべん』別会】感想
今日はといえば、
朗読会『ごんべん』別会までは良かったんですよね、
その後のKalafinaコンサートで首の痛みと怒りでもう頭の中混乱。
しかも、勝って当然のJリーグ、浦和レッズがたったいま優勝を逃した(鹿島優勝)ばかり・・・
1年に1度、浅草のギャラリーエフの蔵(くら、明治辺りに建造されたもの)の中で
ヴァイオリン演奏とともに聴く、
浅田次郎『天切り松闇がたり』、
その第二章『残侠』・第四夜『百面相の恋』
すいませんがさらっとあらすじを。
【あらすじ】
昭和40年台頃(だと思います)。
かつて天下にその名を知られたスリの大御所、天切り松。
今では、警察に請われてその腕を警察官の防犯の知識教育の為に役立ているという。
そして天切り松が警察署に来る度に、
署員達は、天切り松がかつて若かった頃、
明治、大正の頃の任侠達の物語(闇がたり)を聴くのを
楽しみにしていました。
明治が終わって大正の時代、
松吉(天切り松の10代の頃)、
松吉はある有名な犯罪者達の一家で暮らしていました
(今で言う「犯罪者」とは違う、渡世の仁義を守る「侠客」と言っていい連中)。
そして、その兄貴の1人に百面相のせいじがいました。
せいじは帝大生と騙り、帝大近くの
安民宿に下宿していました。
せいじは民宿唯一の学生として、
食事から何からを安民宿の女将に世話になっていました。
そして女将には御茶ノ水学校(今の御茶ノ水大)に通う女将の娘がいて、
「将来は帝大のせいじと御茶ノ水の娘とを結婚させたい」と
女将は言っていました。
女将は戦争で亭主を無くし、
不憫に思って東京へ呼んでくれた兄が株で失敗し(当時は株だったかな?)、
更には大恐慌でお金を預けていた銀行も潰れてしまい、
一文無し。
なんとか民宿を経営していましたが、
景気のいい頃に銀行に「どうぞお金を借りて下さい、そして家を建て直して下さい」と
貸し出された2000円を、
この不況で「貸し剥がし(銀行が貸していた金をいきなり「返せ!」とぶんどる事、多くの企業などがこれで倒産しました)」
される事になってしまい、
あと数日で2000円(現代で言う2000万だとか)を
返せないと安民宿も潰される事になっていました。
せいじに呼ばれて安民宿を訪れた松吉、
松吉にせいじは「この百面相のせいじの仕事に手を貸せ」と言います。
安民宿の女将は、松吉にもご飯を食べていくように言い、
娘にお茶を持たせます。
娘はせいじに話があると言い、松吉の存在も忘れたかのように
重い話をしてきます。
娘「家が貸し剥がしにあって大変な状況、
私も御茶ノ水学校を辞めて働こうと思う」と。
せいじはせっかく御茶ノ水学校まで行ったんだから、
ちゃんと卒業して立派な教師におなりなさい、
ととりなします。
そして、
「金の事なら実家に頼めばなんとかなるので・・・」と
松吉を連れて出かけます。
せいじは帝大生は嘘としてもかなりの博識、かつ色男で
一家の家計のすべてを取り仕切っていました。
松吉は「そんなせい兄い(せいじ)なら仕事(詐欺)なんかしなくても
2000円ぐらい出してやれるのでは?」と言います。
しかしせいじは「金には金の名前がある、今回の件は
三菱(旧三菱財閥)の銀行が貸し剥がしを始めた、
つまり三菱に責任がある事だ、
だから三菱から金をもらう」と。
そして
・ せいじは上海帰りのどこぞのお大臣の息子
・ 松吉はなんと愛新覚羅(ラストエンペラー)役をおおせつかる
(せいじいわく日本語が分からない事にして「ハオハオ」言って笑っていればいい、と)
に化けます。
そうして帝国ホテルへ行き、最上階の貴賓室を借りた上で、
三菱銀行本店へ電話をして、
「皇室にも関わりのある話だが、急遽上海より戻り、
手元に届く為替を2000円ばかり換金したい」と依頼します。
三菱銀行本店のおエライさん達がせいじの元へやってきます。
せいじの姿はどこから見てもお大臣(の息子)、
そして松吉は見た目だけなら中国の愛新覚羅とも見えなくもない。
そしてせいじの話にまんまとのせられ、
・ 愛新覚羅が皇室に中国の事で話をしにいく
・ その為に尽力してくれた大臣に2000円を渡したい
・ 今国から送らせた為替を使いのものが取りに行っているがまだ戻って来ない
・ しかし皇室から連絡があり、急いでいる
という事で、三菱銀行本店の連中は部屋で為替が届くのを待ち、
せいじには先に2000円を持って皇室へ向かって欲しい、
という算段をつけ、
まんまと2000円をせしめ、
色々な店を回って金を交換(今で言うマネーロンダリング)して、
安民宿の女将を通して三菱銀行へ金を返済させます。
三菱側は「まんまと詐欺にあって失った2000円の損失が、
貸し剥がしの返済で戻ってきた2000円で補填できる」と、
まさか自分の金が回り回って戻ってきているなどとは気づきもしないだろう、
とせいじは言います。
ここまでしてもらって安民宿の女将は「これを結納として」と、
娘の方もなんとか結婚の算段を取り付けなければ、
と思い、松吉を使ってせいじを呼び出し、
帝大の桜並木でせいじに「私の事をもらって下さい」と懇願します。
しかし、せいじは娘に対して「あの子は本物の帝大生と結婚すべき」と思っていました。
そうして2人のやりとりの中、
せいじは「あなたにだけは嘘はつけない」と、
ただそれだけを言います。
松吉はその空気に耐えきれず、その場を離れ遠くから見守ります。
そして、多分せいじは再び「あなたにだけは嘘はつけない」と言ったのでしょう、
その後、二人の影が重なる(接吻)するのを松吉は目撃します。
といった流れの任侠話でした。
去年、一昨年は切った張ったの斬り合いや賭け事など、
結構血なまぐさい話でしたが、、、と銀河万丈先生。
※ いつもいつも言っている事ですが、
この朗読の何がすごいって
(昭和の)
・ 天切り松(おじいさん)
・ 警察官達(中年達)
(大正の)
・ 松吉
・ せいじ
・ 安民宿の女将
・ 娘
・ 三菱のお偉いさん方
その他何人もの登場人物を全部銀河万丈先生が
声音(こわね)を変え、喋る早さを変え、と
性格から何からを考えて来て、それを実演して、
と1人で全登場人物を演じている事です。
銀河万丈先生の「それではまた来年、続きでお会いしましょう」で
終わりましたが、もう銀河先生もいいお年です。
物語に出てきた百面相のせいじじゃないですが、
1人5役10役と演じ分ける真の「朗読」をこなす
銀河先生の跡を継げる人はいるんだろうか・・・
それが不安です。
銀河先生当代限りの芸として「ごんべん」が消えてしまったら・・・
※ 声優の神谷浩史さんが「朗読をやりたい」と言ってましたが、
昔どこかのラジオ曲でかかった「人間椅子」はとうてい
朗読とは言えない、単なる「国語の音読み」レベルでした。
その後、某区の公民館で銀河万丈先生の演じた、同じく
「人間椅子」は、その登場人物のすべてが、
本当に生きた人間でした。
だから椅子の中に潜んだ男、という創作なのか事実なのか分からない
この物語の「私」が非常に怖かった。。。