itomasa7の日記

2015年12月05日 22時00分

【月夜の森14 朗読 銀河万丈 『ごんべん』別会】感想

年に1度、12月に浅草の小さな喫茶/レストランにして
土蔵を併設したギャラリーef(普段は猫ちゃんもいるらしい)の
その土蔵にて開催される文化貢献の企画「月夜の森14」、

その中の最初の出し物である、
銀河万丈先生の『ごんべん』別会(朗読会)を観劇して来ました。


朗読:銀河万丈
バイオリン:鈴木葉子


※ パンフレットに
  第二夜「残侠」・第三夜「目細の安吉」と書かれていたので
  ・ 去年もやった第二夜「残侠」をまたやる?
  ・ 2本続けてやる?、となると2時間超になる?
  と「アレ?」と思いましたがどうやらギャラリーefさん側の
  勘違いのようで、今回は第三夜のみ(70分)でした。

  銀河万丈先生いわく、今年で10何回目(初回から参加されている?)、
  「天切り松闇語り」の短編の読み語りに
  最初1時間半かかったのが、
  今年は70分まで朗読が早く回せるようになった(昼の部で計測?)ので
  土蔵で正座している観客陣の足も少し楽になったかな?との事。

  読み語りは面白いながら、
  土蔵での25人密集しての正座はめちゃめちゃ足が痛くて、
  ヴァイオリンが響き始めた瞬間ポーズをチェンジチェンジの
  繰り返しで耐えていました( ´ー`)
  (読み語り中は音を立てないようにする為じぃっとしているので・・・)

  なんか正座の時足に挟むと楽になるクッションありましたよね、
  次回はアレを持っていくかな。。。




●天切り松闇語り 第三夜「目細の安吉」 浅田次郎

明治から昭和にかけての伝説の怪盗「天切り松」松吉、
老年を迎えた昭和後半に怪盗を引退し、
今では逆に警察のお偉方から防犯の為の協力を要請されている。


警察署に行っては警察官達に防犯の知識を与えたり、
(趣味を兼ねて)留置所にわざわざ入って
周りの犯罪者(容疑者の段階?)に
昔の任侠のあり方を語ったり(闇語り)、という事を行っていました。


しかし、正月も明け警察も忙しくなってきて、
しかも警察上層部から押し付けられた天切り松の事を
そろそろうっとおしがり始めた警察署長。

「そろそろ帰ってもらえないか?」と
警察署長室での天切り松と署長の会話の中で、

「ならばとっておきの話を署長だけに聴かせてやろう」、
という天切り松。


警察官が悪い奴と組んでの犯罪が増え、
捕まった警察官が留置所のトイレで自殺を図る、
という天切り松いわく「情けない」事件が近頃あったという。


それに対して天切り松がまだ15、6、
任侠達の元で丁稚をしていた頃の話。

かつてスリ/ひったくりには元締めがいて、
すった/ひったくったモノ/金を名簿をつけて
しっかり管理していたという。

実際のスリと元締めとで
・ 金なら5:5
・ モノなら4:6(6が元締め?)

なんでそんなスリ側に得のないような
(裏の)商いがなりたっていたか、というと。


元締めと警察は裏でつながっていた。

そして、
・ 賄賂をおくる事で警察の締め付けを厳しくしないようにしていた。

・ なにより、スラれた/ひったくられた人にとっては、
  犯人よりも「モノ」「金」が戻ってくる事が重要。
  そういった相談を警察から受けて
  それに応じて返金/返品に応じていた。

  お金なら半分返し(半返し)、
  モノなら金額次第、と。

という、任侠(といっても犯罪者だが)と
警察との間にそれぞれ意味のあるつながりがあったという。

※ 先の犯罪警察官自殺の件にかけて、
  昔は金だけのつながりではなかった、と
  天切り松は主張。


明治の頃、最後の元締め銀次親分、
そしてその跡継ぎになるはずだった目細の安吉。

※ 目細(めほそ)の安吉、とはアダ名(通名(とおりな))で、
  かなりイケメンのダンディ、
  そしてスリの名人だった事からこう呼ばれていた。

しかし、この警察との関係はなくなり、
目細の安吉はただの(超凄腕の)スリになった。


任侠達の所で丁稚として働く松吉は
安吉をアニキとしたい、子分的な立場にいた。


ある日安吉アニキは警察の白井(通称おしろい)に呼び出される。

松吉は「警察なんて!?」と恐れるが、

安吉アニキは「こっちの居場所も知ってるんだ、
  捕まる気ならとっくに捕まえてる。
  それにおしろいとは長い付き合いでもある」と。

おしろいが待っていたのは古く言えば女郎屋、
そこで店を閉めて密談する2人(とおつきの松吉)。


近頃ではスリ/ひったくりの統率が取れておらず、
現行犯を見つけては逮捕、見つけては逮捕、
の繰り返しで収拾がつかない状態になっている、

そしてスリの親分衆もそれを管理しきれない状態に陥っている。

かつての銀次親分の頃のように、
安吉にスリ/ひったくり達を統括し、
警察とのなかだちをする立場に立って欲しい、と。


そしてそれが警察庁のお偉方(原警視?)だかの希望でもあり、
3日後に関東の主だったスリの親分衆一同と警察のお偉方を集めての
「防犯会議」を行う、そこに出席して彼らを統率して欲しい、と。


昔世話になったお偉方の名前が出た事もあり、
安吉も「さすがに無碍(むげ)に断る訳にもいきませんね」と。


しかしそもそも銀次親分の頃の終わりに、
一方的にこの関係を壊し、スリ/ひったくりを
一斉検挙しまくったのは警察の側だった。


そういった事からもおしろいの提案に反対する松吉は帰り道、

松吉「警察その他、えばりちらかす連中には本当にひどい目に合わされて生きてきた。
  自分の大好きな任侠の仲間たち、その中でも
  安吉アニキにはそんな警察に味方するような事はして欲しくない」と。

「警察に味方するのか?」と安吉アニキをいぶかる松吉に対して、
「ほらよ」と懐から銀の懐中時計を取り出す安吉。

おしろいの懐から今さっきの会合でくすねたものだった。
それが答えだ、と言わんばかりに。


松吉は「きっとアニキは警察との会合なんて行かない」、
と安心するが
会合の前日安吉アニキとデパートへ行くと、
「お偉いさんとやりあうんだ、お前もそんな靴じゃもしもの時に困るだろう」
とピカピカの革靴をプレゼントされる。

「アニキはやっぱり警察に協力するのか!?」と驚く松吉。


そして当日。
東京駅丸の内、多くの警察のお偉方と
松吉も名前を知るスリの大物親分衆とが集まる中、
待ち合わせをした安吉はまだ来ない。


そして現代、松吉は署長に語る。
今では失われた「○○」(一瞬で財布の中身だけをスリ盗り、
財布自体は懐へ戻す、というスリの大技の名前、忘れちゃいました)、
「その神業を俺は見たんだ」と。


安吉アニキが来ない事にあせる松吉。
そこへ警察庁のお偉方が現れる。


それを眺める松吉、そしてそこに軽やかに近づく安吉アニキの姿に気づく。

杖をお偉方に当ててしまい、
「これはすいません」と謝るとともにお辞儀をすると
首にまいていたマフラーが落ちる、
それを拾おうとポケットから出した手、

その刹那!

そしてそのままその場から誰にも気づかれずに消える安吉。
追う松吉。


安吉は懐に警察庁のお偉方からスリ盗ったものを見せる。

10円札(今の物価だといくら??10万とか??)が15枚で
150円だった。

松吉「へん、警察のお偉いさんも大して持ってないんだな!」

安吉「いや違う、あの人は300円持っていたんだ」

松吉「それって、、、半返し!!」


安吉は警察庁のお偉方の財布をスリとると同時に半額だけ
金を抜き取り、その半分を戻していた。

それはかつて銀次親分がスリの元締めをやっていた頃の
「金は半返し」のルールにのっとってのものだった。

これが安吉親分の警察への回答だったという・・・


という任侠としての筋は通した、という終わり方。

※ 「天切り松闇語り」はかなり沢山のシリーズがあり、
  その中では切った張ったから泣けるものまで沢山あります。

  今回はその中でもちょっと一風変わった作品でしたかね( ´ー`)




「月夜の森14」、
初日であるこの銀河万丈先生の朗読の他にも
演奏会や落語などもあるようで、
行けるものなら別日(べつび)も参加してみたいな、と
思わせる構成でした。

土蔵の中はヴァイオリンも、朗読の朗々とした声も響いて
いい音響効果出てました( ´ー`)