itomasa7の日記

2015年05月17日 18時01分

【第百五十ニ回「ごんべん」-銀河万丈読み語り-】感想

銀河万丈先生主催の月1朗読回、その百五十ニ回目。


●『蒸しパンのムリムリ』東海林さだお

※ 「ムリムリ」は確か蒸しパンを2つに割く時の擬音だったかしら?
  「メリメリッ」みたいな。

蒸しパン(チーズ蒸しパンより更に昔の四角や三角で茶色とかのやつ)と
カステラって作り方は似てるのに、
カステラは桐の箱なんかに入って上品ぶってるけど、
蒸しパンってほんと庶民の味方と言っていい、
やさしい甘さと美味しさがあるんですよね。

そして蒸しパンの中の気泡が、
蒸しパンを2つに割く時にプチプチとちぎれていく様子とかが
また食欲をそそる。
その上割いた時気泡から漏れる空気すら甘い。

そんな懐かしいお話。


最近はコンビニにはあの「古い」蒸しパン売ってませんね。
別に好きでもなかったけど、
(過去ブームになった)チーズ蒸しパンよりは
あの古い蒸しパンを今は食べてみたいかなあ、と思いますね。


※ ちょっと前までは読み語りが始まり、
  目を閉じればすぐにその世界にダイブ(集中)出来たんですが、
  最近は読み語りの冒頭のあたりでは
  「このお話は面白くなるのかな?」とか
  自分に語りかけちゃうんですよね。

  集中力が足りないのか、
  モヤモヤ病(統合失調症的なもの)に
  なりかけてるのかな。

  結局面白いので問題ないんですけど、
  この雑念がちょっと嫌だな、と思います。




●『羊羹のニッチャリ』東海林さだお

またまた桐の箱、そういうものに入った羊羹って
コンビニなんかで売ってる100円とかの羊羹と違って、
ほんと上品な食べ物、という感じがします。

一口食べては「羊羹とは本当にー・・・」と、
何かいい事言いたいんだけど浮かばなくて
そのまままた一口食べては「本当にー・・・」と、

そして3口も食べるとくちの中が「ニッチャリ」と
溶けた羊羹の甘さで満たされた感じになります。


しかし「ニッチャリ」は普段
・ ラーメンが伸びて「ニッチャリ」する、
・ うどんが伸びて〃、
など本来あまりいい意味で使われません。


いや待てよ、「ニッチャリ」の王様、
お餅は焼いてプクーっと膨らんだのを齧って
「ニッチャリ」デローンと伸びるけど、本当に美味しい。

だから「ニッチャリ」は美味しい、でいいじゃないですか。
というお話。


自分はお羊羹といえば、結構くどい砂糖の甘みを
お茶でほどよく味の調整をして食べるもの、
という気がします。




●『プリズンホテル』【2】秋7・8 浅田次郎

東京警視庁のマル暴達の慰安旅行先、
それが何故かヤクザ達の為のホテル、
プリズンホテルに決まってしまい
それに全く気づかぬ警察様ご一行が到着。

そしてマル暴の中でも古株で一番五月蝿い上司が
仲間連中にバスで酔い潰され、
ホテルの一室で目を覚ました所から。


吠え渡る軍歌(演出で本当に軍歌を放送してました)、
右翼の街宣車のような連中がプリズンホテルへ到着。

「何事か!?」とマル暴上司が部屋を飛び出し、
階段吹き抜けから下のフロントを見ると
ヤクザと思しき(おぼしき)連中がわんさかわんさか。

ヤクザ達を威力業務妨害その他でとっちめようと
息巻くマル暴上司に対して、
プリズンホテル支配人が現れなんとかそれを止める。

マル暴上司「さてはあんたら、ヤクザ達に脅されてるんだな?」と勘ぐられるも、
「ここはヤクザ専門ホテルです」とは言えない支配人は
「あなたが今見ているものの中に答えは隠されている…」とクイズを出す。

元々クイズが大好きだったマル暴上司はノリノリで
調度品から何からを見て回ったあげく、
壁掛けの桜から「うちは桜の代紋(警察)だ」と連想して、

支配人「更に桜といえば!」

と促され、
「関東桜会」という極道組織に辿り着き、
「ヤクザの経営するホテルだった」という所に気づくまで。




同じマル暴達でもインテリ署長はそんな事つゆ知らず、
温泉の露天風呂で一人のんびり。

街宣車の軍歌を聞いても、
田園調布育ちでエリートコースまっしぐらだった署長は
「きっともと軍人さんの集まりなんだろう」とのんきなもの。

そして内風呂から露天風呂へ何人かのいかつい連中が
出てくるがメガネをしてない署長はその姿が良く見えない。


で、その中でもっとも古株じみた男が
「”戦争”の時は女房子供を二階へやって、
自分たちはいつかちこまれていいように
懐に拳銃とドスを準備してたものさ。
そして実際鉄砲玉にかちこまれたが
あいつら腹にダイナマイトを巻いてやがるんで
拳銃で撃つ事もできねえ。
だからドスで腹かっさばいてやったわ」と。


そういった話を全て「満州帰りの軍人さんかしら?」など
良い方(?)へ受け取っていた署長だが、
いかつい連中の会話につい相槌を打ってしまい、
いぶかる連中に対して

署長「いやあ、うちらの修羅場なんて軍人さん達からしたら
  本当に小さなものですね。どうぞ会話をお続け下さい」と。

そしていかつい連中は、署長も極道仲間と思い露天風呂へ入ってくる。


署長の目の前のモヤが晴れると全身刺青の屈強な男たちが立ち並ぶ。

自分の勘違いに気づいた署長に対して、
いかつい連中の親分格が仁義きりを始める。

「手前生国は~今は関東桜会に身を起きます○○ともうしやす」。

そして「さあ、今度はそちらさん、仁義をお切りくだせえ」と言われるも、
何も言えず無言になってしまう署長にヤクザの親分がキレる。

「修羅場だなんだと言っておいて仁義の一つも切れないのか、この若造が!」

そしてなんとか仁義を切り返そうとするも署長は意識を失ってしまい、
ヤクザの親分の胸に倒れこんでしまう。




「きっと大成する」と言われたアイドル歌手の卵だったが、
敏腕マネージャーの口車に乗り共に事務所を飛び出たあげく、
元事務所の圧力で仕事のほとんどを奪われ、
今では温泉場の歌手兼コンパニオン兼夜のお相手、とまで落ちぶれてしまった女性。

自分のヒモのようになり、自分に子供を二度も堕ろさせた
このマネージャーを殺して、新聞の一面、最後の花道を飾りたいと思い、
飲んだくれているマネージャーのクビを締めようとするが。

寝ぼけながらも女の唇を奪い、胸に手をまわし

マネージャー「髪いい香りするね、温泉に入ってきたの?」

とジゴロぶりを発揮され、手練手管に落ちて行動に失敗する女性。


女性「こんなんじゃダメだ、あいつにいいようにされる前に
  殺してしまわないと。」

※ 前回まではこの女性歌手とマネージャーのコンビは
  別の旅館にいると思ってましたが、
  2人がいるのもまたプリズンホテルでした。




プリズンホテルのオーナー、
総会屋にしてヤクザの大親分の鶴の一声で
全国有数のクラウンホテルグループから
プリズンホテルへ差し出された支配人とフランス料理シェフ。

(和食の)カジ料理長は、フランス料理シェフ(服部)に
「三ツ星フランス料理シェフの名前があれば、
どこのホテルだって引く手あまただろうに、
なぜプリズンホテルに残る?」と。

フランス料理シェフの目的はただ1つ、
かつて鮎御膳などでとてつもない技巧と飾り付けの鮮やかさを見せ、
「とてもかなわない」と、カジ料理長の腕に惚れ込んでのものだった。

今ではフランス料理の注文などなく、
たまのお客の依頼で簡単な洋食などを作る以外、
キャベツの千切りなどに明け暮れているフランス料理シェフ。


そのキャベツを見たカジ料理長は、
「さすがだな、だが”道具”がいけねえ」と。

フランス料理シェフは、
かつて修行したフランスの料理店でもらった
一流のナイフ(包丁)に問題などある訳がない、と思うが、

カジ料理長「これは西洋人が力で切る為の包丁だ、ちょっと待ってろ」

と神棚の上から丁寧に風呂敷で巻かれた1本の包丁を取り出す。

カジ料理長「下っ端どもにはまだ早いがお前にならいいだろう」

と差し出されたその包丁は、武士の時代の名刀刀鍛冶が職を失って
打った”伝説といって良い”一品にして逸品だった。

フランス料理シェフもかつて料理道具店のガラスケースの中で
1度だけ見た事のあるその包丁は

店員「1億積まれても売れません」

と言われるほどのものだった。


恐る恐る包丁を握り、キャベツの上に当ててみると
みるみるうちに繊維をストンと切っていく。

カジ料理長「本当は魚料理が一番いいんだ、
  魚が切られた事にすら気づかず生きてるほどの切れ味だ」


しかし、フランス料理シェフは
「この包丁を使うには、自分にはまだ、”人生の経験”が足りなすぎる」
とうやうやしく包丁をカジ料理長に返す。

そしてカジ料理長も、
「俺も先代料理長からこの包丁を出された時、同じ事を言ったんだ」と笑い返す。


そこへ先の女性が「りんごの皮を剥きたいので包丁を貸してほしい」と現れる。
カジ料理長はすぐさまその銘刀を女性に貸し渡してしまう。

驚き後ろから、
「あの女性達アベックはその雰囲気から”きっと刃傷沙汰を起こす”と
言われていたブラック客ですよ!
なんでそんな相手にとんでもない銘刀を渡すんですか!?」
と噛み付くフランス料理シェフに、

カジ料理長「だって切れない包丁だったら刺された方も痛いだろう」と。




ここまでで今回はおしまし。


ちょっと中途半端な所まででしたね。

その銘刀で女性がすぐさまマネージャーを刺してしまわないか、
露天風呂の署長はどうなったのか?
そんな所が気になる回でした。


それにしても、10人20人の登場人物(男、女、子供、老人その他色々)を、
発声から口調から台詞のペースから間の取り方からを切り替えて、
全員演じてしまう銀河万丈先生はやっぱりすごい。

1人で行う読み語りを「朗読」、
複数人で行う読み語りを「群読」と言いますが、
銀河万丈先生のそれは「1人群読」と言っていいほどのものに思えます。

他の声優さんの朗読CDなどを聴いても、
基本「声の演じ分け」の時点で上手に出来ていなくて、
単に1人の人が物語を読む、になってしまっている事が多いです。
(特に女性声優。)

それに比べて数十人を「別の個性」としてちゃんと演じ分けられるこの技術。

これほどの「芸」が、銀河万丈先生1代限りのものだとしたら
もったいなすぎるな、
なんとか次世代にこの技術を継げないものか?
と思ってしまいます。

※ お手伝いされている青二プロスタッフ陣も
  朗読は出来るのですが、
  やはり演じ分けのレベルが低すぎる。

  多分、若手ではまだたどり着けない、そういう領域にあるのだと思います。


そういう意味もあって、この朗読会に来ている面々は、
いったいどのようなルートで、
この朗読会に辿り着いたのだろう?と考えてしまいました。

・ 青二プロその他声優さんの卵が修行を兼ねて来ている

・ 銀河万丈先生などと直接つながりのある方々が来ている

・ 以前文化放送などで行われた朗読イベントで、
  本朗読会の存在を知り通っている(僕はこれです)

など色々な所からここに来る事になったのだと思いますが、
その中で1人でも「銀河万丈」の遺伝子を継ぐものが
現れないかな、と想像してしまいます。




●『小ぬか雨』藤沢周平

江戸時代、夕刻女が家の鍵を締めようと裏戸へ回ると
1人の青年がうずくまっていた。

驚いてしまう女に対して、
「追われているんです、かくまってください」と青い顔で言う青年。

「喧嘩して相手に怪我をさせてしまい追われている」という青年、
そして実際女が外を見てみると
いかつい男たちが何かを探してウロウロしていた。

そして数時間後、礼を言って青年は立ち去るも
またその数時間後戸を静かに叩く音。


青年「まだ、奴らがいたんです!」

青ざめる青年。
青年の容姿や紳士的な対応、そして頼られる事に
少し優越感を覚えていた女も
さすがにちょっと迷惑にも感じ、

家の周りを見て回ってそんな連中がいなければ
大家に頼んで青年を叩きだしてもらおうと考える。

しかし、街一帯を囲む4つの橋を観に行くと
それぞれにいかつい男たちが見張りをしていた。


「これはタダ事じゃない」
きっと青年は喧嘩どころではなく人殺しかなにか、
とんでもない事をしてしまったのではないか?
といぶかるも、

自分も人を**いと思った事はあった・・・

※ 女は両親を失った独り身でそれを心配した叔父が
  若い男を紹介し、半年後に祝言をあげる事が決まる。
  しかし、この若い男は粗暴ですぐに女の家へ押しかけ、
  女の純血を乱暴に奪った。
  その時女は「この(粗暴な)男を**い」と思ったのだとか。

そういう事から、青年の事もそれほど恐れる事はなく、
青年の様子や女に対しての丁寧な接し方などに気を良くし、
女は青年を数日家に置いてやる事に。


女「ここを出て、それからどうするんだい?」

と聞くと

青年「品川に知り合いがいるので、まずそこへ行こうと思います」と。


そこへ祝言相手の粗暴な男が、女を抱きに家へ現れる。

青年が見つからないようにする為、

女「今日は熱があるから帰っとくれ」

と懇願するも、暴力的に女の身体を蹂躙しようとする男に対して、
女は本気で噛み付く。

そして男は「キチガイめ!」と捨て台詞を残し退散していく。


そして数日青年を匿う中、同心を名乗る男が訪ねてくる。
人殺しの下手人として青年を探して。

同心に聞いた所、
青年は悪い人妻に騙され奉公先の金に手をつけた上、
行き場がなくなり人妻を殺してしまったのだという。


「青年の事など知らぬ存ぜぬ」で通し同心を返した後、
女は青年に事の顛末を聞く。


青年は、仕事仲間の誘いで人妻の小料理屋へ行った。

人妻の悪い噂は最初から聞いていて、
「どれ、ひと目見てやるか」ぐらいの気持ちだったのだが、
実際はすぐに人妻の手練手管にハマってしまった。

そして、人妻に言われるまま店の金にも手をつけてしまい、
どうにもならなくなった所で、
人妻に「一緒に逃げてくれ」と言うが鼻で笑われたという。

ただし、人妻のその反応に怒って**のではなく、
それまでまるで10代かのように若やいで見えた人妻が
本性を見せた途端30過ぎの恐ろしい姿に見えて
つい刺してしまったのだとか。


そんな青年を「悪い女に騙された」と哀れみ、青年と一夜をともにする女。
(どうやら粗暴な男と結ばれる自分の身も同時にはかなんだ模様。)


そして長屋を囲む橋に誰もいなくなったのを確認したある日、
青年を街から逃す。

しかし「こと人殺しとなれば知人の品川の家にも役人がいるだろう」
という女に対して、

青年「品川には病気の母を預けているのです。
  ひと目あってそして自首(言葉は昔のものだったかと)しようと思います」と。


そこへ粗暴な男が現れ、
「こんな事だと思っていた、
あの日の女の様子は尋常じゃなかったからずっと家を張ってたんだ」と。

そして、青年と取っ組み合いになり殴り合いもみ合いになる。


そして殴り合いの末、立ち上がったのは青年だった。

女「殺してしまったの?」と言うも

青年「こんな事で人殺しはしません。
  この恩は一生忘れません」と去ろうとする。

女「あたしも連れていって!」と願うも、

青年「もっと早く、先にあなたと出会えていれば・・・」と
青年は走り去っていく。


そして女は倒れている粗暴な男を連れ帰り、
「またいつもの日々に戻るのだろう・・・」と。




藤沢周平さんはやっぱり独特な締め方だなあ、と思いました。

確かに青年と女が先に出会えていれば悪い事など何もなく
幸せになれたのかも知れないなあ。

しかし、人に騙されてとはいえ悪事に手を染めた青年を
そんな事気にせずかくまってやれる女も、
よっぽど今の暮らし、未来に思う所があったのかなあ・・・


読み語り後に不思議な余韻のある
藤沢周平さんや宮部みゆきさんの時代ものよりも、
単純に泣けてしまう、そしてかっこいい、
池波正太郎さんのシリーズがまた聴きたいなあ。


めっちゃ長文になってしまいました・・・