itomasa7の日記

2015年03月08日 21時03分

【表現集団蘭舞 第3回公演 「3つの物語」】感想

CoRichになかったのでこちらに舞台の感想を書きます。
☆3つ、まあ「普通」のお芝居。


短編3つのオムニバス形式との事。

(1)真冬の飛行機墜落事故
1人助かり山小屋へたどり着いた女、
そしてその後を追うように同じ山小屋へたどり着いた男。


(2)アイドル撮影会での盗難事件
アイドル撮影会として集まったアイドルと
カメラマンその他合わせて4名、
山小屋という密室の中アイドルのパンツが盗まれた。
「犯人はこの中にいる!」


(3)肩を壊した高校球児、高校3年最後の戦いを前に
医者のOKがもらえず初戦に出場できない事が決まった
エースとそれを見守る女子マネージャーの夕方の会話劇。


【総評として】
価格2200円100分の舞台として、
お値段お時間分の価値は観客に提供できたと思いますが、
もっと物語や演技を練り込む事で面白いものが出来たのでは?
と、「惜しさ」が残ります。




(1)について
・ 真冬の雪山での墜落事故で
  たった1人生き残ったものと理解し、
  周りの遺体その他を横目になんとかあがき、
  山小屋へたどり着いたはいいが、
  「助けの来るあて」の無さに絶望している女。

  そこに入ってきたもう1人の生き残りの男。

  この男が、直前まで前説をやってた人なんですが、
  女との感情の温度差がひどすぎる。

  絶望にキレ気味の女に対して、
  「こういう時は明るい事を考えた方がいい」などの台詞を吐くのですが、
  女と同じ悲惨な状況を見てきて、
  ホワイトアウト状態の山の中なんとか山小屋に辿り着いた男が
  そんなすぐ軽々しく言える台詞じゃないでしょ、と。
  (どこぞの毎回不幸に見舞われるハリウッドスター並みの
  強靭な精神力の持ち主です。)

  深刻な想い、葛藤などを込めた上で、
  それでも「こういう時は明るい事を考えた方がいい・・・」と
  深みを込めて台詞を吐いて欲しかったです。
  (=台詞にその場面に合った説得力がない、という感じでしょうか)

  あと、ロマンチックな言葉の数々をこの男は吐きますが、
  見た目が純朴な青年という感じの
  この役者さんが吐くにはあまりにも似合わなすぎるかな、と。
  (そこはギャップウケを狙ったのかな?)

・ 少しでも明るく打ち解けようと男、女の順に自分の今までの人生を
  語り始めますが、
  男の少しだけ深みのある人生(就職から結婚、離婚、
  そして娘の幼稚園の発表会を遠くからひと目だけでも
  観る為に飛行機で北海道へ向かっていてこの事態にいきあたってしまった事)、
  
  そして女の悲しい人生(自分の家庭教師だった男に惚れて結ばれて
  幸せだったと思っていたがやがて距離が出来、
  それでも愛していたが男は実は既婚者だった、
  それでも男を愛し、会う度に手首に傷を作っていき、
  ある日深く切りつけすぎたその傷が元で救急搬送され、
  もう人生どうしていいのか分からない、どこか遠くへ行きたい、
  と飛行機へ、そして・・・)

  「このまま死んでしまいたい」という女に対して、
  男が怪しげなコインを使って、
  「表が出たら生きろ!裏が出たらここでしネばいい」と
  女の本心を引き出します。
  (「幸運のコイン」と聞いた時から、「表しかないコイン」という
  よくあるネタは思い浮かびましたが)
  
  そして、「生きたい!」と決意した女と共に、
  「生き残ったら付きあおう」と冗談めかして言い合う2人。

  そして遭難から数日目の深夜、吹き止まぬ吹雪の中、
  山小屋で不意に襲われた睡魔に「きっとこれで寝たら死ぬんでしょうね・・・」と暗転。

  ※ 結局この後2話、3話に男の娘(むすめ)、
    2人の息子が登場する事で、
    2人は生き残ったというオチが披露されますが、
    無理に短編達をつなげる事を狙うよりも、
    ここまでの物語の流れで生まれかけた「テーマ性」
    (脚本家はこの遭難劇の行く末に何を語りたかったのか)
    そこを掘り下げてほしかったなあ。。。

    ・ 生き残るにしろ、死んでしまうにしろ

    ・ それこそ3編終わって、それが全部夢オチでまだ
      2人の遭難のまっただ中だったにしろ

    ・ 1話、2話、3話、通して「太いテーマ」を披露できていたら
      一番素晴らしかったのですが・・・

    それがないから、「ただ繋げただけ」という「発見」はあっても
    「驚き」はない、「面白み」にかける物語達で終わってしまうという・・・

    ※ 観劇後、役者と(知り合いと思われる)観客(ほとんどの人が知り合いの模様)の
      会話の中で「お話繋がってたんだねー」「うん、繋がってたんだよー」
      で会話おしまい。
      「深み」がないからそれ以上の追求が出来ない・・・


(2)について
・ 吉本新喜劇を観ているかのような「コテコテのお笑い」「リアクション」で
  観客を笑わせようとします。
  (予定調和のネタ的即興劇、という感じでしょうか。)

  しかし観ていて、このネタを友人がやったのなら場の空気的にも
  きっと笑わなければいけないんだろうな、と思いつつ、
  プロの役者がお金を取った舞台の上でやっている事、としては
  なんのきっかけも準備もない状態でいきなり披露される
  「上手くない笑いネタ」に全く笑えません。
  ※ 「笑い」がちゃんと分かっている脚本/演出家、役者なら、
    物語の流れの中で狙い尽くし、ねり尽くし、計算しつくされたタイミングで、
    観客の予想のはるか外側を狙いすましたかのように、
    「上手く」笑いを取るものですが・・・
    この座組では、
    1.真面目に話す
    2.笑いネタドーン!(さあ、笑って?)
    ~の繰り返し

  (友人連中と思われる)周りの観客は「笑い屋」のように
  全てに反応してましたが、
  それが逆に「内輪レベルを脱出出来ない劇団さんなのかな?」と
  悲壮感すら漂ってきました。

・ そうして笑いネタ、少し怪談ネタ、と来て、
  最後に実はアイドルは警察のおとり捜査官で、
  色々と疑いの持たれていたこの撮影会主催側を
  調べていたのだ、という突拍子もないオチ。

  はっきりいって「アドリブ即興劇」の出来損ない、
  と言っていいぐらいに何も考えずに作ったお話だなあ、と。

・ そして、そこに現れる「伯父さん」こと
  アイドル「ヒカル」の実の父にして1話の男。
  そう、男はあの遭難を生き残り、そして前妻との娘「ヒカル」と
  ギクシャクしながらも、こうやってつながっていたのです、と。
  なんとも上手くない繋げ方だな。

  せっかくの1話の「テーマ性」ありそうだった
  話の終わらせ方がここで既に台無しになった感がありました。


(3)について
・ 高校球児でエースピッチャー、2年の大会を
  あと一試合勝てば甲子園、という所で
  相手チームの選手に打たれて敗退、
  その上怪我をしてしまい、
  それが直った今も、医者の許可がない為、
  3年のこの夏最後の大会の1回戦に出る事は出来ない。

  自分の目の前で「最後の夏が終わってしまう」と
  なんとも悔しい、そして先輩達(かつての3年)との約束に対して
  不甲斐ない自分を恥じている。

  夕方の1人練習場面。

  そこに女子マネージャーが声をかけてきます。

・ そして会話の内容的に女子マネージャーがこのエースを
  (恋心なのかどうなのか)気にかけている事が伝わっています。

  しかし話は、エースが女子マネと別の選手がデートしてるのを見た、
  という話になり、
  女子マネは嘘がつけない性格なのか、

  ・ 野球に集中したいと断ったが、
    野球中心でもいい、別に一緒にいられなくてもいい、
    と押し切られ、それなら・・・と付き合う事に。

    そして先日お互い時間が空いた日にデートして、
    そしてホテルへ行った事まで喋ってしまう。

    ? ある意味今時の高校生?

  そういった話の流れをしてもなお、
  「もう野球はやめる」と言うエースに対してハッパをかける女子マネ、
  そして逆に女子マネに「高校卒業しても野球に関われよ、お前ほどの女子マネはいない!」
  と言い返すエース。

  そして女子マネが「打席に立つから1打席勝負しろ!」と言い出します。
  (女子マネは中学時代ソフトで大会優勝したほどの腕前)

  そしてその勝負の中で(夏の大会1試合目で負けたとしたら)
  「この投球が俺にとって高校最後の1球!!」
  とエースの心に火がつきます。

  そして女子マネを三振に打ちとったエースに、
  「あんた、高校卒業しても野球続けなよ!」と女子マネ、
  そして「なんだかこんな事で野球やめられねー、って気持ちになった」
  というエース。

  すがすがしく別れる2人、
  そこへ2話のアイドル役ヒカルが姉として登場し、
  このエースが1話の2人の息子である事が判明して終了。

・ このお話は高校球児にありがちな出来事とその葛藤、
  今風な物語展開、そういったものを含めて、
  1編でちゃんと物語として完結していたかな、と。


そして全編終わったと思ったら1話の男、2話のアイドル、3話のエースと
歌い手さんが出てきて、3つの話に絡めた歌を歌いますが、

・ 歌自体は3編にうまく合わせた意味のあるものだったのでしょうが

この3編の主人公達の登場の仕方を使うほどに、
うまく3編が組み合わさってない(根幹をなす「同一テーマ」などが存在しない)
感じだったので、「上手くない終わり方だな」と。。。


・ 3編それぞれ物語の雰囲気を変えてきた事は良かったかと思います。
  観ている側を飽きさせない工夫という意味で。

・ 3編が「繋がっていた」という事については
  「上手さ」がないので「どっちでも良かったかな」という感じ。

・ 1編でちゃんとオチてるという意味では3話が一番まともで、
  次に「テーマ性」の片鱗を感じた1話、
  2話については内輪ウケ以外の何者でもない話だという事で
  「ハズレ」でした。


まあ、最初にも書いたのですが、もう少し色々な部分を深める、練り込む努力をしていたら、
もっと面白いお芝居になったのではないかな?
という感じでした。

itomasa7

自分はCoRichに長文書きすぎる派ですねー。熟練観劇者さんは「感想はスパッと書くようにしないと長続きしない」って指摘してましたし( ´ー`)

2015年03月08日 21時15分

itomasa7

あ、ちなみに>おかじーさんの言う通りで、どんなにいい演技する役者でも、物語全体の構成者である脚本/演出がダメだと単なる駄作(役者さん可哀想(´・ω・`))ってのが結構ありますね。

2015年03月08日 21時16分

itomasa7

脚本/演出が素晴らしい、その上でそれをちゃんと具現化してくれるいい役者さんの存在があると素晴らしい作品が出来ますね。脚本/演出がダメダメでも役者さんの熱量だけで涙を誘ったりとかは出来るけど、それは「名作」ではなく、役者さんの感情が伝播しただけ。。。物語としては失敗してるかと

2015年03月08日 22時39分