2015年01月03日 14時28分
【楽園追放】感想
2XXX年、大気汚染、人口の爆発的増加、
そしてナノハザード(これが何かは不明)、
人類の9割は大地を捨てて地球上空数万Kmにある衛星の
電子都市ディーバへ、肉体を捨ててデータとして移り住んでいた。
※ マトリックスと違い、脳や肉体がどこかに残ってるのではなく、
生まれて数1000時間後(赤子の時点)、
脳の全ての情報をディーバのメモリ上へ移して、
肉体は放棄(廃棄?)されている模様。
そこは”よりディーバに貢献した者”だけが大量のメモリ空間を与えられ、
より自由を獲得している世界だった。
近頃、このディーバに対してハッキングをしかけ、
「宇宙船が完成しました。宇宙探索を一緒に目指しませんか?」といった
メッセージを送ってくる”フロンティアセッター”を名乗る人物がいた。
フロンティアセッターは、
どうやらリアルワールドの地球上からハッキングをしかけている、
という事が分かったディーバ首脳陣は捜査官達を地上へ送り込む。
※ 地上へ送り込まれる際は、
電子世界の住人のDNA情報を元に肉体を生成し、
そこに思考/記憶の一切を送り込み、物質的な人間に戻す。
三等捜査官アンジェラ(CV.釘宮理恵)は、
更なる昇進、メモリ獲得の為、他の捜査官を出し抜こうと
成長途中の肉体にそのまま乗り込み
(本来アンジェラが20台後半だとしたら16歳ぐらいの肉体)
地球へ降下する。
地球では、地球に生きる人類の中の協力者、
地上調査員と待ち合わせていたが、
地上調査員ディンゴ(CV.三木眞一郎)は、
大量のサンドワームから車で逃走中だった。
機動兵器アーハン(ロボ)の力でサンドワームを退治したアンジェラ、
しかしディンゴはアーハンのオンライン機器を破壊してしまう。
「ディーバよりも高いハッキング能力を持った相手に対して
オンライン状態なんて自分の居場所を伝えてるようなもんだ」と。
オンライン機能を破壊されたアーハンは単なる鉄クズだった。
そして、ディンゴはフロンティアセッターが何故
わざわざそんなハッキングを仕掛けているのか、
その理由を考え、
そのメッセージ自体を調べてみよう、と調査を行う。
・ 宇宙船が完成した
・ 宇宙探索の仲間を募集している
その情報を本気にした場合、宇宙船開発の上で必要になる燃料、
燃料に使われている物質の地上での取引量を調べ、
大量の取引が継続的に行われている町にターゲットを絞る。
その間、アンジェラは「生身の身体」に慣れない為、
睡眠不足、過労から病気にかかってしまい、
病気を治す薬を作る為にディーバへオンライン接続するしかない、
と諦めるディンゴに対し
(オンライン=フロンティアセッターに居場所がバレる)、
地球の人達は薬か、栄養を取って静養する事で身体を治す、
と聞いたアンジェラは「自分も静養して身体を治す」と
ディンゴにおかゆを作ってもらい、眠る事で身体を癒やした。
(「なんて地球人類は不便なんだ」、と思いながら)
そしてディンゴが聞くロックや、
ディンゴ自体がギターで奏でる音楽に対して、
「(やかましいだけの)そんな音楽何がいいの?」と
聞くアンジェロに、ディンゴは
「耳で聴くんじゃない、身体の骨で感じるんだ」と答える。
そして、身体の癒えたアンジェラとディンゴ、
捜査を続けていくと、
ロケット燃料に使われる硝石を、親子3世代にも渡って
取引し続けているというバイヤーに出会う。
※ 硝石と引き換えられるのは、
金ではなく、電子機器のジャンク部品達。
その取引の場を見張る事にしたアンジェラとディンゴ。
バイヤーの男が硝石を持って現れると、
そこには旧世紀からのロボット達がゾロゾロと現れ、
バイヤーにジャンク部品を渡すと、
硝石を持って地下鉄構内跡地へ入っていく。
「旧地下鉄を使って移動しているのかも知れない」と、
硝石に発信機をつけていたアンジェラ、ディンゴはその後を追う。
※ 発信機という古典的な手段が何故バレなかったのか?
について、ディンゴは
「あくまでも無人、人が介在しなかったからだろう」と。
発信機をたどって着いた場所は、とある街の跡地。
その入口に1台のロボットが、門番というには弱々しく立っている。
「守るのなら、もっとぎょうぎょうしく、あるいは隠れて守るのでは?」
と思ったディンゴは、直接ロボットの元へ近づいていく。
そして、
ロボット「私はフロンティアセッターです。あなたの来訪を歓迎します。」
ディンゴ「出来れば中の人に会いたいんだが?」
フロンティアセッター「私は電子世界の存在です。実体を持ちません。」
そして、アンジェラはフロンティアセッターが自分と同じ
ディーバのデータ化された人間かと考えるが、
フロンティアセッター「私は、宇宙探索ロケット開発メンテナンス用
AIの中から第うん万回目のアップデートで自然発生した存在です。」
※ 楽園追放の始まりから、
攻殻機動隊の電子世界チックな表現が多用されていたので、
攻殻機動隊の先の世界を描きたいのかな?
それにしてはアニメチックな絵柄過ぎて
ちょっとそぐわない気もするが?
と思っていたのですが、ここではとうとう
AIの「ゴースト(自分の意志)」獲得の話まで。
まさに攻殻機動隊の先の世界を想定して描かれた物語なんだなあ、と。
フロンティアセッターは、元々数100年前
※ ディーバの建造よりも前
まだ地球に全ての人類がいる事に、
「汚染された地球に代わる新しい生存可能な星」を探す為の
有人宇宙探査ロケットを作る為のAIであったという。
そして、宇宙探査ロケットの本体は地上上空数万Kmに建造され
※ 丁度ディーバの衛星の地球を軸にして反対側
光学迷彩により、隠されてきた。
宇宙探査ロケット開発当時入り乱れた各国の思惑と
宇宙探査ロケットが奪われた場合、
そして軍事転用された場合を考慮して、
エンジン部分だけは地上で開発していた。
そしてナノハザードなどにより地上から多くの人類が失われ、
あるいはディーバへ移住する形で去っていき、
本宇宙探査ロケット(のエンジン部分)の開発を行う人間が
いなくなってからも、
フロンティアセッターがただ1人、多くのロボットを操り、
ロケットの燃料その他を集めて、ロケット建造を続けてきたという。
そして、ついにエンジン部分を地上上空数万Kmにある
宇宙探査ロケット本体に運ぶ為のロケット(ややこしいな)が完成し、
この宇宙探査ロケットは元々「人類が宇宙を探査する為のもの」という事で、
これに乗る乗組員を探す為にディーバに対してアクセスし、
募集をかけていたという。
※ この宇宙探査ロケットは、有人探査を考えていたにも関わらず
その設計上ほぼ人を乗せる事は出来ない。
ただし、ディーバで生活しているデータ化された人間なら
メモリ空間上に何人でも乗る事が出来るという。
そして、フロンティアセッター自身もロケット発射時に
ロケットをメンテナンスするAIとして共に旅立つ事を決めているという。
この間(かん)、ディンゴはフロンティアセッターの聴く曲などの好みが
自分と合う事などから、
「一緒にセッションしよう!」とギターと
フロンティアセッターの奏でる曲とでセッションしたり
かなり仲良くなっている。
フロンティアセッターは人間と一緒に暮らした時の中で
音楽その他に対する「好き」という感情まで獲得していた。
その夜、アンジェラはディンゴに
「今回、これだけ迅速にフロンティアセッターを発見した。
これだけの調査能力と成果があれば、
ディーバで暮らす権利だって与えられるはずなのに何故しない?」
と訪ねる。
ディンゴ「この荒廃した大地を捨てて、無限の自由を謳歌するという
ディーバでの暮らし。
しかし、ディーバだって無限じゃない、
その有限のメモリ空間を有用な人物には与え、
不要と切り捨てられた人々からは奪い、
アーカイブ(圧縮して動けない状態で保存しておく?)されてしまう。
そのどこが現代の”楽園”なんだ?
みんなメモリの為に必死でディーバに尽くす、
どこに自由意志があるんだ?」
と逆にアンジェラは問い返されてしまう。
そして、
・ 不正アクセスの正体が開発したロケットの乗組員を
募集する為のものだった事
・ その発信元は自然発生したAIのゴーストだった事
・ もう正規のルートを通らないアクセスはしない事
・ その上フロンティアセッター自身ロケット発射と同時に宇宙へ飛ぶ事
を確認し、それを報告する為にアンジェラは
※ アーハンを壊された為、ディーバへ直接意志を転送する方法はなかったが
それはフロンティアセッターの持つ機器類を改修して代行する事になり
ディーバへと意識をデータ化して帰還する(※肉体は置いたまま)。
ディーバ首脳陣に事の顛末を報告するアンジェラに対し、
上層部「ディーバに対抗しうるだけの人工知能が存在している事自体に問題がある。
アンジェラは地上に戻ってそのAIを破壊しろ!」
と命令するが、アンジェラはフロンティアセッターとの間に
感じたものからこれを拒否し、
ディーバの市民権を剥奪、メモリを奪われた上でアーカイブ状態にされてしまう。
そして、ディーバ首脳陣は地上に現在残っている捜査官達に
フロンティアセッターおよびそのロケットの破壊を命じる。
アーカイブされたアンジェラの元へ
フロンティアセッターが現れる。
まず、また不正ハッキングした事について謝罪した上で、
地上では他の捜査官達がフロンティアセッターの街および
ロケットを破壊する命令を受けて移動中である事、
これに合わせロケット自体はもう発射準備に入っている事を報告し、
アンジェラをディーバ内より脱出させる。
※ アンジェラがディーバから脱出するさまをとって
「楽園追放」とした訳ですかね( ´ー`)
まず衛星軌道上にある小衛星、そこに格納された
機動兵器アーハンをハッキングし、アンジェラの意識をそこに乗せる。
これに気づき追っ手を差し向けるディーバ。
なんとかこれを撃墜し、
地上へ、そして地上に残したリアルボディ(アンジェラの実体)に
かえるアンジェラ。
そしてアンジェラの操るアーハン1機と、
ディンゴが街中に仕掛けた仕掛けでもって
街に押し寄せる捜査官達に対して、
ロケット発射のその瞬間まで持ちこたえようとする。
※ ちなみにフロンティアセッターは再度、
ディーバの市民に対して「宇宙探索の旅に一緒に出ませんか?」
と(特にアーカイブされてしまい、自由を失っている市民達に対して)呼びかけるが、
1人として賛同を得られなかったという。
アンジェラのアーハンで捜査官達のアーハンを何機となく撃墜していくが、
アンジェラにもピンチが!
そこへフロンティアセッターは、
「アンジェラ、どうでしょう?私と一緒に宇宙探索の旅に出ませんんか?」
とスカウトする。
しかし、ピンチを乗り切ったアンジェラは
「地上でやる事がある!」とこれを断る。
自分の任務である「人類を乗せての宇宙探索ロケット発進」を
達成出来なかったフロンティアセッターに対して、
ディンゴ「どうだ、フロンティアセッター。
そこまで人間と同じように音楽を楽しみ、
人の事を考えられるようになったお前は、
もう”人間”って言っていいんじゃないか?」
の言葉に、
フロンティアセッター「そう、考えてもいいんでしょうか?」
と同意し、
そして宇宙へと旅だって行く。
地上に残ったアンジェラは
「ああ、リアルの肉体は重いし窮屈だし・・・」と文句を言いながらも
ディンゴと共にトラックで走る。
そして、宇宙にて宇宙探索ロケット本体と合体したエンジン、
そのただ1人の乗組員、
フロンティアセッターは陽気に歌を奏でながら宇宙を進んでいく・・・
~ 完 ~
最初、攻殻機動隊崩れな絵のイメージなどから
「狙いはいいけど、ちょっとアニメチックすぎるか?」
など色々悪印象を持っていましたが、
人類の2つの可能性
・ 攻殻機動隊、マトリックスのような
電子世界を次の生活圏とする事
・ インターステラーのように、
宇宙に次の生存圏を探しに行く事
とそのぶつかり合いを見せた上で、
電子世界が絶対の救いではない事や、
人類と同様「ゴースト」を持つに至ったフロンティアセッターを
”人類”と認めるディンゴなど、
物語のテーマ的とその観せ方は非常に良かったかと。
※ 作画の良さに対して登場人物はメイン5人程度とかなり少なく、
場面転換もかなり少ない(=世界を大きく感じられない)のですが、
それにしては見事に大きなテーマを盛り込んできたなあ、と。
最優秀ではないけど、良作の1つですね。