2014年09月22日 20時55分
映画【柘榴坂の仇討】感想※ネタバレ
ネットの映画チケット予約、
新宿ヴァルト9での映画2本の間がかなり空いたかな、
と思ったので新宿ピカデリーで適当な映画探してたら
「柘榴(ざくろ)坂の仇討(あだうち)」
というのがあり、時代劇ものらしい、
多分今流行りの「笑わせ系時代劇」じゃないかなー?、
と鑑賞決定。
しかし、実際観てみたら、めちゃくちゃ古き良き時代劇、
かつ忠孝を重んじるタイプでした。
まあ、良い話でしたけどね。
【内容】
・ あるお偉いさんを乗せた籠(かご)を守っていたが、
襲い来る浪人衆に対して
剣の柄に巻かれた「柄(つか)カバー」のようなものが邪魔で剣が抜けず、
籠のお偉いさんを救えない!
という夢から目が覚めた主人公(中井貴一、浪人者姿)。
そして部屋はボロ、隣で寝ている女房(広末涼子)もボロ姿
まだ物語は見えない。
・ 10年の昔、
剣の腕を買われ、大老の籠番に任命された主人公(侍)、
大老に挨拶に行くと「しー!(と口に指を当てて)」
ウグイスが鳴くとすぐに紙に筆を走らせ一句読み上げる。
(今年のウグイス初鳴きだという。)
そしてこれを任命のお祝いに、と主人公によこしてくる。
この大老、井伊直弼(鬼平犯科帳の人)。
主人公はこの大老の態度にすっかり惚れ込んでしまう。
・ 家督を親より無事譲り受け、
嫁(広末涼子)との婚礼を済ませ、
順風満帆の主人公。
・ 友人とそばを食っていて、
友人「井伊直弼大老の籠番になれたのは良いが、
あの大老は数多くの侍衆を斬って、今街で一番恐れられている。」
主人公「しかし、あのお方のお家での態度はとても素敵なのだ。」
と。
・ しかしある雪の日、門に手紙が差し込まれていて
そこには
「本日大老を暗さつする」とある。
これをすぐに大老にお伝えし本日の城勤めは止めるべき、
と大老に忠告するも
「何があってもそれが人の人生よ」
と井伊直弼は城へ向かうのを止めない。
・ お家前にて籠に乗り、
上官「徳川家よりもらったという槍を決して粗末に扱うな!
そしてずぶ濡れで城に入るなど許されんので雨合羽を着、
刀の柄(つか)には雨除け(柄カバー)をかけろ」と。
※ この時点でOPの映像からこの上官が浪人衆と結託してるんじゃないかな?
と思ったんですが、そこは謎のままでした。
主人公はもしもの場合にそなえ、柄カバーをゆるめにかけておきました。
・ そして、籠を進めると
浪人「注進!注進ー!」と
土下座しつつ直訴状を差し出す。
籠の井伊直弼に話をすると
井伊直弼「命を決しての注進だ、手紙は丁重に受け取り、
その上でその者は門番へ引き渡せ」
との事。
しかし、手紙を受け取ろうとすると
周りを浪人者達に囲まれ、
主人公は剣を抜くも、
徳川家よりの槍を浪人の1人に奪われ、それを追って街中へ。
街中にて浪人者と刀と交えて剣を取り落とすが、
脇差し(小刀)にて肩を斬り込み、槍を取り戻す主人公。
しかし、籠に戻ると既に籠番全員と籠の中の井伊直弼は
討たれた後であった。
※ 雨合羽および柄カバーが邪魔で抜刀する事すら出来ずに
斬られてしまった模様。
これが俗にいう「桜田門外の変」
・ 籠を60人もの兵で守りながら、10数名足らずの浪人者に
井伊直弼を斬られた事で、主人公は切腹し
あの世の大老のもとへ逝こうと考えるが、
既に自分の父と母が責任をとって自刃し、
そのおかげもあって主人公は切腹をまぬがれる(本人はうれしくない)。
そしてお家の家名を城があずかるので、
「今なお捕まらない5名の襲撃犯、その1人でも良いので
討ち果たしてこい」との命を受ける。
・ こんな状況なので妻にも実家へ帰るように言うが、
妻は「一日も早く命(めい)を果たして汚名をすすぎましょう」と。
※ 後で分かるが、この場合、襲撃犯を討って家名を取り戻したとして、
その後主人公が大老の後を追って名誉の切腹、
(多分)その妻も主人の後を追って自刃、
という流れになるのを2人とも知って言っていた模様。
・ そしてその日より、ボロ屋に住まいて女房は働きに出、
主人公は5人の襲撃犯を探す日々が続く。
しかし、襲撃犯は1人、また1人と別の者達に捕まり、成敗され、
と減っていき、最後の1人になる。
・ そして、とうとう大政奉還(江戸城を幕府が無血開城)、
江戸幕府終焉、明治時代到来、
更には廃藩置県により「藩がお取り潰し」、
=主人公に命令を与えていたものもいなくなり、
主人公の家名が戻る事も無くなる。
(ここまで実に10年以上の歳月が流れていた。)
・ 人は皆マゲを切り、洋服を着るようになって
明治の時代に馴染んでいくが、
主人公は未だ刀を差し、マゲをゆったまま武士であり続けようとする。
※ 既に武士という位はなくなっている。
・ 主人公は毎月、月命日(月ごとの命日)には
井伊直弼の墓のある寺で手を合わせている。
寺の坊主が「(お墓に)会っていかれませんか?」と言うも
主人公「会わせる顔がありませぬ」と去っていく。
そして、ここに謎の車引きが現れ、主人公同様に手を合わせる。
・ ある日街で昔の友人に出会う。
彼は武士でなくなった後、邏卒(らそつ、警官)になっていた。
その後、借金取りに乱暴される元武士を見て、
つい助けに入り、そこへまた元各藩の武士であったもの達が
助けに入り、と「皆、武士ではなくなっても、その誇り、
侍の気持ちは捨てていないのだな」とうれしくなる。
・ ここで別場面、
先の車引き(浅草の人力車と同じ)の男直蔵(なおぞう、阿部寛)が登場する。
※ 登場の仕方から「この男がきっと襲撃犯最後の1人だな」とは
すぐに解りました。
長屋の皆とも仲が良く、未亡人とその娘(みち)と特に仲が良い。
長屋の仲間は未亡人に「直蔵さんと世帯をもったらどう?」とからかう。
娘みち(5歳ぐらい)は、直蔵を父のように慕っており、
肩車などしてもらってとても喜ぶ。
・ この頃、主人公の女房は働きに出ていた酒場で、
同僚の女中から西洋のお守りとして「ミサンガ」をもらう。
(これが切れたら願いが叶う、と)
・ 先に出会った友人が、その上司の警察署長にかけあってくれ、
襲撃犯最後の1人の手がかりを掴んだ、という事で
主人公にお呼びがかかる。
・ 警察署長邸の警察署長とその妻の会話。
妻「なんてかわいそうな」
警察署長「そうだのう」
妻「違うわ、可哀そうなのは奥さんの方よ。
旦那が大老の仇を討ったとして、その後名誉の切腹、
そして奥さんもその後を追う事でしょう。
なんの為に10何年も旦那を支えてきたのか・・・」
・ 主人公は「警察署長からお呼びがかかった」と妻に伝え、
そして警察所長邸へ。
(妻は神妙な顔つきで主人公を見送る。)
警察署長邸へ行く途中、新聞社にて
本日より「仇討ちが禁止された」事を知る。
・ 警察署長に話を聴くと
警察署長自身元奉行であり襲撃犯達の裁きを下したという。
井伊直弼の襲撃犯10数名のうち
何名かはすぐに自刃、その他何名かは斬られ、
更に自首してきた何名かは切腹させた、との事。
主人公「なんで、襲撃犯が名誉ある切腹なのですか!?
打首(犯罪者として)ではないのですか!」
と怒るも、
警察署長「桜田門外の変では、井伊直弼の方に非がないとは
言い切れなかった。彼は罪なきものを斬りすぎた。
それに対して立ち上がった襲撃犯達はいわば
仁の人(なんて言ったか忘れちゃった)。
それに対して名誉の切腹を与えない訳にはいかない」、と。
思わず警察署長に斬りかかろうとする主人公。
しかし、その後警察署長の言い分を認める事になる。
自分にはとても良い上司だったが、
世間からはそうは見られていなかったのか、と。
そして襲撃犯最後の1人がどうなったかを聴くと、
主人公と同じように今もあの頃を抱えたまま生きながらえている、と。
警察署長「敵(かたき)を討ってあなたも死ぬのですか?
見てくださいよ、あの花を」
垣根の椿(?)を指指す。
警察署長「雪の中健気に咲いて、まるで”生きろ!”と言わんばかりじゃないですか」
・ 車引きが今日も仕事に出ようとすると、
未亡人の娘が「こんぺいとうだよ」と
車引きの口に入れてくる。
車引き「こいつは甘えなあ、行ってくるわ」
しかしついていこうとした娘は転んでしまい、
こんぺいとうを落として泣き出してしまう。
・ そして雪の夕暮れ、
車引きの男の前に主人公が立つ。
車引き「どこへ行きましょう?」
主人公「雪、といえば桜田門か」
(その言葉の意味を捉えて)
車引き「いや、この雪の中では坂を登れません・・・」
主人公「(笠をかぶっている車引きに)顔を見せてくれないか?」
仕方なく顔を見せる車引き、
そう、かつての襲撃犯手配書の男に間違いなかった。
素性もバレて覚悟を決めた車引き
「それでは街を案内いたしましょう、車にお乗りになってください」
と。
そして2人の会話
主人公「家族は?」
車引き「自分、家族に面目の立たない事をしてしまって死なれてしまいました」
主人公「自分と同じだな」
主人公「名は?」
車引き「直蔵、と」
主人公「車引きになる前の名は?」
車引き「○○○○(襲撃犯最後の1人)」
主人公「身を隠す為に名を変えたのか?」
車引き「いいえ、自分のやってしまった事を忘れぬよう、
あやめたお人の名前の一字をいただいたんでさあ」
※ 井伊直弼の「直」
主人公「ここはなんという坂だ?」
車引き「柘榴(ざくろ)坂という所でさあ、ここで自分だけ逝き遅れてしまいまして・・・
自分はあの頃死んでしまったのと同じなんでさあ・・・」
・ ここでカットイン
かつて桜田門外の変の後、柘榴坂にてすぐに名誉の切腹をしようとした車引き、
しかし主人公に肩を斬られていた為、
刀を持てずにしねなかった。
そうしている間に両親が自刃してしまい、
自分の切腹は許されなくなってしまった、と。
・ そして坂の上、
車引き「覚悟を決めやした、この13年、よくぞ
主人の敵(かたき)を討とうと志(こころざし)を持ち続けたもので。
さあ、お好きに討って下さい。」
主人公「斬り合わぬのか?」
車引き「もう自分に刀はありません。」
主人公「ならばこれを使え(と主人公の刀を差し出し)、
自分は脇差しでいい。」
車引き「かつてと逆になってしまいましたな。」
主人公「そうか、お主も覚えていたか。」
・ そして目録持ち(免許皆伝のようなもの)の主人公と
車引きが剣で斬り合う。
※ るろうに剣心見た後だったので剣戟としてのかっこよさはなかったけど
ここまで来るともう心情劇、
この2人の心情に涙が出る。
そして、主人公の脇差しが車引きの首をとらえるが
そこで主人公は手を止めてしまう。
主人公の目は垣根の椿を見ている(警察署長の言葉を思い出した模様)。
車引き「なぜ、手をお止めに・・・」
そして、それではと自ら自刃しようとする車引きを主人公が止める。
・ 主人公「かつて、そちらが直訴状を差し出した事を覚えているか?
あれを主人井伊直弼は、「命がけのものだから読まぬ訳にはいかぬ」と言った。
そして主人は自分が襲われる可能性を知りながらも、
行かぬ訳にはいかぬと言った。
そちらの命がけの行動もまた、受け止めぬ訳にはいかなかったのだろう。」
主人公「それに、今日から”仇討ちは禁止”になったのだ。」
主人公「なあ、直蔵さん、そなたの気持ちはまだあの柘榴(ざくろ)坂で
死に損なった時のままなのか?
もう時代も変わった、どうかあの坂を越えてはもらえぬか?」
・ そして夜遅く家へ帰った車引き、
隣の未亡人宅の戸を叩く。
直蔵「夜分遅くにすまない」
未亡人「どうしたんだい、直蔵さん?」
直蔵「みち(娘)がこんぺいとうをおとしちまったから(と懐から買ってきたこんぺいとうを差し出す)」
※ ここで自分の涙腺にガツんと来ました。
斬られてたらこのこんぺいとうも届けられなかったのか、と。
未亡人「すぐ支度するから何か温かいものを食べていきなさいよ」
直蔵「いや、夜分悪いから失礼する・・・」
直蔵「そうだ、○○さん(未亡人)、今度みちを車にのせて○○さんと3人で
祭りでも観にいかないかい?それじゃあ」
こうして直蔵も人生を前向きに生き始めた、と。
・ そして主人公は女房の酒場へ。
後片付けしてる女房に「たまには一緒に帰ろうと迎えに来た」と。
そして帰り道、
女房「今朝、警察署長さんの家へ行くと聞いた時、
もう会えないんじゃないかと思いました(泣き出す」
主人公「今度、○○(元2人と井伊直弼がいた藩の土地)へ里帰りでもするか」
そこで女房がふと手首を見るとミサンガが切れてなくなっている。
※ このミサンガネタははっきりいっていらなかったと思うなあ。
今とつながるネタを入れたかったのかも知れないけど、
いっきにお話が「作り物」臭くなったから。
2人、雪の道の上に星を見つめ
~ Fin ~
とにかく、多いとは言えない伏線を前半でいくつも張っておいて、
それを少しずつ少しずつ後半につなげていく、
そして江戸幕府の時代の忠義やなんかを、
明治になって藩も何もかもなくなっても1人頑なに尽くそうとする、
しかもそれは「井伊直弼のありようが好きだったから」という、
まさに忠臣。
観客はおじいちゃんおばあちゃんばかりでこういう話が好きそうな人ばかり、
多分今の若い人にはこういう古臭くて義理だ恩だとかのお話は
ウケないんじゃないかなあ、と思いつつ、
先の「るろうに剣心」に対して
こういう「古臭い時代劇」も残っててもいいのかなあ、
なんて思ったり( ´ー`)