恋する寝台特急物語 フルムーンの旅1便

20XX年。東京
岡本博也44歳。妻とわこ44歳。
博也はある新聞広告を見付けた。
(フルムーンパスか。九州へ帰ることも出来るな)
「なぁ、とわこ。5月はお義父さんの3回忌だろ?帰らないか?」
「そうねぇ。私も考えてたとよ。私一人で帰ろうかと思ってた」
「フルムーンパスって言うのが出てるんだ。元は取れるから、九州に帰らないか?お義母さんに連絡取ってみてよ。一週間有給取っても良い時期だしさ」
「そがんね。日程ば聞いてみるけん、帰ろう」
「わかった」

3年前に遡る。
博也は重要な打ち合わせに参加していた。41歳で課長に昇進していた。
プレゼン役は博也だった。
「当社の製品は他社に比べ、効率も良く、コストパフォーマンスに優れています…」
そんな会議を進めている会議の中だった。