真夜中の日記

2021年10月02日 18時13分

ああ、愛しのコロッケそば。

 関西、特に大阪は粉もん文化で蕎麦よりも饂飩に馴染みがある土地柄で、美味い蕎麦屋というのが数える程しか存在しない。
 またそんな蕎麦にコロッケを乗せて食べるなどというのは前代未聞の、青天の霹靂だったのである。

 関西在住の私がコロッケ蕎麦に初めて出会ったのは、もう五月だというのに肌寒い日の大学の学食だった。
 その日もいつも通り、色んな地方から集まった学生達で食堂はごった返していた。
 その頃まだ1回生だった私は長野県松本市から出てきた垢抜けないSさんと何故か気が合い、ほぼ毎日お昼ご飯を食堂で一緒に食べる仲になっていた。
「お饂飩? お蕎麦?」
 食券を渡すと忙しそうに手を動かしながら、こちらを一瞥もせず威勢のいいおばちゃんがたたみかける。
 私は本日のAランチの天津飯セット350円を頼み、彼女は温かいお蕎麦180円とコロッケ80円を注文した。
「あいよ」
 私よりも小さく細い彼女は慎重に湯気の立つ丼と別皿に乗ったコロッケをトレーに乗せ、熱気こもる食堂内でなんとか空いてる席を確保し、二人して手を合わせた。
「いただきまーす」
 次の瞬間、彼女は躊躇なく別皿のコロッケをぼっちゃんと、かけ蕎麦の中に泳がせたではないか! それも豪快に。
 おまけに七味まで振って!!
 その光景に私は目を見張った。
 いや、正確にいうとドン引きだったのである。
 (コロッケ乗せたで、マジか…)
 薄茶色いだし汁にコロッケの油分が輪を描いて珠を作っている。丼を傾けてズズッと一口飲み、今度はコロッケと蕎麦を絡め器用に啜っていく。
 時間の経過とともにだし汁を含んで崩れゆくコロッケ。
 その旨味が溶け込んだ汁を最後まで飲み干すと満足そうなほわほわとした顔をして、手を合わせた。
「ごちそうさま!」
 その時の彼女の笑顔がたまらなく可愛かったのを鮮明に憶えている。

 あれから数十年後、あるTV番組で関東中心に食べられている「コロッケそば」の特集を見た。
 ピンときた、ああ、あれだ。衝撃だったあの時のあれだ。
 彼女特有の性癖ではなく、一般にその地方で広く伝わっている食べ方なのだと知った。

 コロッケ蕎麦、いや平仮名の「コロッケそば」がコロッケ蕎麦には似合う。

 関西の、いわゆる薄い狐色の出汁の効いたつゆではなく、少し濃いめの甘辛いつゆを作る。
 茹でた蕎麦に先ほどの熱い出汁を注ぎ葱を適当に入れて、ノンフライヤーで温めたコロッケを乗せる。そして忘れてならないのが七味である。



 それからというもの私はコロッケそばを好んで食べている。
 あれから何年経った今もたまに昔を思い出して、ふふふと笑いながらコロッケそばをもくもくと食べるのである。
 (もうひとつ付け加えると、コロッケそばのコロッケにはソースをかけるかかけないかが未だにずっと気になっている)


後日談:
 卒業する頃にはパンクのバンドマンの彼氏に毒されてSさんはゴスロリに目覚め、ロッキンホースバレリーナを履いてしまうのである。
 (そんな彼女も今は立派な3児の母)

シャオシャオ

富士そばでよく食うやつ(´Д`)めう

2021年10月02日 18時35分

真夜中

シャオシャオさん こっち富士そばないんだよう
立ち食いそば屋にコロッケもないんだよう
フライドポテト乗った蕎麦は何故かある!
ほんとコロッケそば大好き
大阪にも出店しないかな…

2021年10月02日 18時56分