恋する寝台特急物語15

12月26日。東京駅。とわことの別れがやってきた。博也は緊張していた。心に決めた事を伝えなければならない。それを切り出せずにいた。しかし、いつまでも伝えられないのは心苦しいだけだった。そうこうしているうちに、列車がやってきた。博也は思いきった。
「とわこちゃん、話を聞いてくれないか?」
「何ねぇ?」
「俺、君の事が好きだ。俺と付き合って下さい!」
「…」とわこは涙を流しながら答えた。
「…良いよ。凄く嬉しい…時計よりも素敵なプレゼントばい。その言葉、待っとったと…不束者ですが、宜しくお願いします!福岡に行ったら、毎日ネクタイを締めてあげるけんね」
「有り難う!」お互い抱き合い、見つめあい、そっと数秒間、唇を合わせた。
「ファーストキス、あげたばい」
「え?前の彼氏とは?」
「私の事ば大事にしてくれんかったけん、しとらんと。博也君が初めてばい」
「俺も初めてだよ。ファーストキスだ」
すると発車ベルが鳴った。
「しばらくは遠距離恋愛になるけど、必ず福岡に行くけん、浮気したら駄目よ」
「わかってるよ。卒業したらすぐに行くから」再びキスをした。すると、列車の扉が閉まった。シンデレラを乗せた列車を、博也はいつまでも、見送った。そして、安堵に包まれた。