恋する寝台特急物語11

朝。博也が先に目を覚ました。ベッドカバーを捲ると、浴衣がはだけたとわこの姿が現れた。白い下着が博也の目をくらます。カバーをかけ直そうとすると、とわこが目を覚ました。
「おはよう」
「お、お、お、おはよう。早く浴衣直して!」
「ああ、よかよか。減るもんじゃないし。着替えてくるね」とわこはバスルームに入った。博也はいそいそと着替えた。
朝食を食べ、チェックアウトし、駅に向かい荷物を預けた。
「じゃあ、行こうか」二人は腕を組み、福岡の街を歩いた。とわこの柔らかい肌と、胸のふくらみを感じた。でも、二人の思い出の1ページができた。帰りの列車までの時間、二人は楽しんだ。
夕方。列車の時間が近づいた。二人は腕を組んだまま、博也の乗る列車を待った。
「いいのかい?遅くなっちゃうよ」
「いいの。博也君を見送ってから帰るけん」
「ありがとうね」
「内定、もらえるとよかね」
「うん。そうだな」
「私は進学するけん、頑張るよ」
「わかった」
「あと、これは睡眠薬ね」とわこはウィスキーのポケット瓶を渡した。
「あはは!気が利くね。有難う」博也は受け取った。
(まもなく東京行き…)アナウンスが流れた。青い車体が、ホームに滑り込む。ドアが開いた。
「それじゃ、有難う。冬に会おうね」
「うん!またね」
博也はとわこを抱き締め、頬にキスをした。すると、発車ベルが鳴った。博也は列車に乗り込んだ。すると、扉が閉まった。汽笛を鳴らし、列車は動き出す。とわこは涙を流し、列車は去っていった。
(博也君、ホントに優しか…)
とわこはホームに佇んだ。