リュカの日記

2018年06月23日 17時41分

死体との純愛。退廃は現代では狂気ですらない、『死体泥棒』

タグ: ビブリオバトル

『死体泥棒』
  唐辺葉介


 まずこの作品のamazonの内容紹介を見てもらいたい。
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『突然の死を迎えた彼女の死体を葬儀会場に忍び込み、盗み出してしまった「僕」。
~唐辺葉介の問題作にして、新たな代表作(ラブストーリー。』

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 表紙をよく見ると、「代表作」にルビふって、ラブストーリー。
このセンス、どうでしょうか。
どれだけ自身満々だ、ってなもんですが、本を読み終えた後のあなたは、ウンウンと納得せざるを得ないでしょう。

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 小説の主人公は人生投げやり大学生、彼女は貧乏で水商売。
非モテな僕に彼女ができたと思ったら、事故死してしまった。
死を受け入れることを拒んで、死体を盗み出し、自宅に業務用冷蔵庫を設置して彼女を保存し続ける……。

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 犯罪小説のようなタイトルは実は美しき純愛です。死体との。
彼女の死をきっかけに、くすぶっていた主人公は吹っ切れてしまう。別に猟奇的趣味でもなく、恋愛に狂っているわけでもない。
そうしてクライムノベルよろしく、死体遺棄として捜査を始める刑事をやりすごすパート、大学とバイトを辞め、実家とも疎遠になり、社会からフェードアウトして彼女と過ごす時間が増えていく……というパートが並行して進められます。
 甘くもなく、空虚なだけの死体との生活は、進展していく刑事たちの捜査と、死んだ肉体という生理上の限界の前に綻びはじめます。それでも二人だけの生活は回想を交え、続いていく。
ただ滔々と生活を維持していくだけの主人公は冷静で、永遠の愛を誓った行いというわけでもない。ただただ、不満足感だけが残っている。この感じ、非常に非モテ的ではないでしょうか。
 矛盾した自分の行動に理屈をつけながら、あくまで冷静に、少しずつ歯車がズレていく。
一見、退廃的で、お耽美の印象すらある死体との恋愛劇は、現代モノとして描かれるとこれほどに空虚で、狂気ですらない、ただ消耗していくだけの毎日です。

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そうして迎えざるを得ない物語のラストは、苦しく詰まった息をやっと吐き出せるような、そんな心地を覚えさせるでしょう。感想サイトでも評価上場です。
このモテない夏に、現代の死体との美しきラブロマンス、如何でしょうか。


https://www.amazon.co.jp/%E6%AD%BB%E4%BD%93%E6%B3%A5%E6%A3%92-%E6%98%9F%E6%B5%B7%E7%A4%BEFICTIONS-%E5%94%90%E8%BE%BA-%E8%91%89%E4%BB%8B/dp/4061388215

リュカ

その発想はなかったわ

2018年06月23日 17時46分

リュカ

これすげーな。俺らの末路やん。

2018年06月23日 17時53分

低空飛行の大原タエ

おー!エレナ事件みたいだ!
http://karapaia.com/archives/52223526.html

気になる読んでみるう

2018年06月23日 17時58分

リュカ

外持だすのすげーな。

2018年06月23日 18時12分

リュカ

低空飛行の大原タエさん そうそう、それ思い出したね。おすすめです。

2018年06月23日 18時13分

卜ルハン

死体とのラブストーリー…ハッピーエンドにはならないのはわかるものの展開は読んでみないとわからない…読んでみたいと思わせるのは随一な気がする

2018年06月23日 23時50分

リュカ

卜ルハンさん 多分文章練ってた時間は随一だと思いますわ。この作者はしっかりと終わらせるのが上手いと思います。

2018年06月24日 20時14分