2018年04月08日 22時53分
焼肉草子
春はやきにく。やうやう茶色くなりゆくセンマイ、少しかじって、焼いてる煙の細くたなびきたる。
夏はミノ。ハラミはさらなり、レバーもなほ、豚トロの多く頼みたる。また、ただ一皿二皿など、ほかの肉に行くもをかし。タレなど変えるもをかし。
秋は壺漬カルビ。牛脂の差して肉の端いと柔らかくなりたるに、鳥の肉も食うとて、三皿四皿、二皿三皿など食べ急ぐさへあはれなり。まいてサンチュなどの連ねたるが、いと可愛く見ゆるは、いとをかし。腹減り果てて、焼肉のジュージュー音、食器のカチャカチャ音など、はた言ふべきにあらず。
冬は特上和牛。霜の降りたるは言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、また皿でも頼むかと、呼び鈴にて急ぎ呼んだ、網持て走る店員も、いとつきづきし。閉店時間になりて、ぬるくゆるびもていけば、机のあそこんとこの火も、白き灰がちになりてわろす。