2015年11月03日 15時54分
学校と下積み修行は別物
ホリエモン「寿司職人が何年も修行するのはバカ」発言 数か月で独り立ちの寿司はうまいか?
※一部抜粋
ホリエモンは2014年12月26 日にYouTubeで配信している「ホリエモンチャンネル」で寿司職人について語っている。コロンビアに寿司店を出したいという男性からの相談に答え、その中で寿司職人になるには10年くらいかかると言われてきたけれど、半年くらいでプロを育成する専門学校も出来ている。長い期間修業が必要なのは「1年間ずっと皿洗いしていろ」などと寿司作りを教えないから。今は独学で寿司を出したり、短期養成の専門学校に行って寿司職人になる人が増えている、問題は寿司を作る人のセンスだ、などと語った。
http://www.j-cast.com/2015/11/02249615.html?p=all
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■学校や研修と下積みはまったく別物
まずホリエモンの言葉が足りない。
「(寿司職人のスキルを身につける為に)何年も修行するのはバカだ」
って言いたいんだろうし、それ自体はまぁウソじゃないと思う。
この人の認識が間違っているのは職人の下積みを学校と勘違いしてるという点。
学校は「金を払って」スキルを教わる所で、下積みは「(少しの)金を貰って」スキルを教わる所だ。
場所の成り立ちも目的もまったく別物だ。
■店は育成の為に存在しているわけではない
大前提として、職人の側からすれば「スキルを伝える」というのは損だ。
商売敵に盗まれれば、店の売り上げに影響だってある。
だからこそ、門外不出のタレ、といった話はよく聞くわけで。
店の経営に人手が足りなければ、シンプルに雇えばいい話で、教育の義務なんてものはない。
一般の会社と個人の店の大きな違いはここで、会社は持続的に利潤を出すことを前提に経営している。
だから、新人を教育して、世代交代して、稼ぎ続けるというプロセスが必要になる。
つまるところ、後進の育成は業務の一環だし、出資者がいればそれを要求されるだろう。
個人経営であれば、極端な話、自分の人生の食い扶持さえ稼げればいいので、1代で店を閉めることも可能だ。
そういう「後継者を必要としていない」職人に対して、弟子入りしようとすれば
「店の業務に貢献するから、スキルを教えてくれ」
というぐらいしか交渉のチケットにはならない。
で、スキルも何にもない若手が店、しいては職人に貢献しようとすれば
「皿洗いや雑用を格安でやる」
くらいしか手段がないのは当たり前の話。
そういう意味では、ホリエモンの
※ 一部引用
長い期間の修行や苦労によって手に入れたものは価値がある、というのは偏見であり、寿司職人の修行というのは若手を安月給でこき使うための戯言に過ぎないというのだ。
※ 引用終わり
「若手を安月給でこき使う」という点だけは正しい。
これは「格安労働」と「職人の門外不出のスキル」の取引なんだから。
■道の継承と店の経営はまた別の話
ホリエモンの発想にはもうひとつ暗黙の前提があるように思えて
「(寿司を売って金を稼ぐために)何年も修行するのはバカだ」
という話にも見える。これ自体も確かにウソではないと思う。
ホリエモンにとっての仕事は「サービスを生産して、金を貰う」という一点でしかないのだろうし、
そういう価値観では、「寿司職人」というのは「上手に寿司を作るスキル」を持つ人でしかないし、
「弟子入り」というのは「上手に寿司を作るスキル」を教わる場所にしか見えないんだろう。
たぶん、この手の人には○○道、という感覚はまったく理解できないんだろうな、と思う。
運動系であれば剣道とか柔道とか、文化であれば書道とか茶道とか。
何かの分野に熱心に取り組んだ人が持つ、その分野に対する哲学。
そういう部分を受け継ぐのも「弟子入り」の大きな目標の一つだ。
ホリエモンはそういう哲学を
「長い期間の修行や苦労によって手に入れたものは価値がある、というのは偏見」
といって、ばっさり切り捨ててしまう。
確かに、「金を稼ぐ、店を経営する」という点において、この「道」の効果は定量化できないし、
なくたって儲けは出せるだろう。
「消費者」たちがみんなこの「道」を感じ取って商品を選ぶか、といえばそれはノーだし、
実際に市場を席巻するのはいつだって「安くてそれなり」のものだ。「高くて良いもの」ではない。
それでも、「道」を継ごうという人がいるのはそこに美学が、憧れがあるからだ。
柊
なんとなくコンピューターチェス対人間っぽい空気もありますの。
2015年11月03日 16時10分
しゅれでぃんがー
柊さん > コメント感謝です。強いことはもちろん大事だけど、プロってそれだけじゃないと思います。
2015年11月03日 18時07分