2015年10月16日 21時58分
20151016「電車で家に帰る」
気が付くと、電車に乗るところであった。
どこへ何をしに行ったのかは分からない。分かっているのは、家に帰るために電車に乗ろうとしているということである。
家に帰るために電車に乗る。当たり前といえば当たり前のことである。
私が乗り込むと音も無く電車が発車した。西の空に真っ赤な夕日が沈もうとしてるのが見えた。
ふと見ると、何人かの乗客が座っているのが分かったが、誰も動かない。
黒いマネキンが座っている。話している気配はするので、おそらく人間なのだろう。
自分がそういう風に見えているだけだ。
気にもせず車両の中を前の方に歩いていくと、男の子が一人いた。
車両の一番前の席で、楽しそうに一人ではしゃいでいる。
その子はマネキンではなく、普通の人間に見えた。私はその子を知っている。
こちらが見ていると、その子は気が付いたようで視線が合った。
しかし、お互い話しかける様子はなかった。
一瞬、若い頃の自分ではないかと思ったが、楽しそうにはしゃげる人間ではない。
それに自分がここに存在している。そんなことはあり得ない。
外に目を向けると、電車がかなりゆっくりと走っているのが分かった。
線路の周りの建物を一つ一つ確認することができる。
駅を一つ通過して思い出した。一度来たことがある場所であった。
前に来た時、降りた駅だったけど、何をしに来たんだっけと考えていると、男の子が大声で笑う声が聞こえた。
思考を中断され、なんで邪魔をするんだと思って見ると、男の子がこちらをじっと見ている。
真剣なまなざしでこちらを見ている。表情はない。
急に、何か大事なことを忘れているような恐ろしい程の不安感に襲われ、汗が吹き出した。
この子は誰だ? 知らない男の子だ。なぜこちらを見ている?
そこには何の感情もなかった。ただ、見ているだけだった。
という所で目が覚めた。相変わらずの夢である。現実離れした世界なら疲れることはないのだが・・・
現実世界では、一日、自転車で出かけて帰ってきた。
平凡な日常である。