しらはかの日記

2015年09月22日 04時11分

あの花感想(アニメ版、2011年頃書いた)

 実写版に合わせて公開してみる。2011年頃のアニメ本放送時書きました。


 スゴい作品だと思う。

 何故ならこの作品は、冒頭の数分を見るだけでどういう結末に至るかわからない人間はいないからだ。

 ヒロインのめんまは幽霊として登場し、願いごとを叶えたいと言っている。何故今出てきたのか、どうして出てきたかはわからないが、10年前に死んでしまった少女が見たのは、10年を経て変貌してしまったかつての仲間達だった。

 変貌ぶりからどれだけ10年前に戻るかがこの作品のキーになるため、かなり思い切った路線変更を全キャラがしており、同時に元に戻ることはめんまの消滅を意味する。それが冒頭を見るだけで予想できてしまう。

 それだけ展開が見えていようものなら、普通は興味も尽きるはずだが、着地点を豪快に見せつつも、「そこに至る過程を見たい」と思わせることで興味を引き出している。そしてその興味の引き方が、かつてとの変わり方にあるため、いかにディスコミュニケーションな状態なのか、どれだけ互いに心を閉ざしているかが丁寧に描かれることになる。

 主人公のじんたんは、かつては「超平和バスターズ」というグループのリーダーとして、誰よりも何でも出来るし、リーダーシップを取っているみんなの中心だった。でも、10年後は志望校の受験に失敗し、非進学校に入学し、その事実に耐えられず不登校になっている。

 彼の目的はめんまのお願い事を叶えることだったが、最終的にはめんまと離れたくないと思うようになる。

 ヒロインの一人、あなるは、かつても今もずうっとじんたんが好きだった。でも、だからこそにじんたんが好きなめんまに対し嫉妬しており、一方でめんまのことはじんたん抜きでは大好きだった。そんな二律背反を抱えながら、めんまが亡くなり、じんたんとの仲を遮る者はいなくなったのだが、だからといって堂々とじんたんにアプローチできるほど貪欲になりきれず、ずうっとくすぶり続けている。

 そんな純でありがちな思いを抱いているのに、格好はギャル風という、わざと真逆のアプローチを取らせており、かつ名前は「あなる」だし、視聴者に一気に感心を抱かせる重要なキャラクタである。

 目的はじんたんと両思いになることだが、一方でめんまのお願いに対しては「めんまが消えればじんたんと堂々とつきあえる」という思いを抱く。

 ゆきあつは10年前からめんまのことが好きで、かつめんまと両思いであり、みんなのリーダーであるじんたんに嫉妬していた。その思いからじんたんに負けまいと進学校を受験し合格。文武両道を地で行くイケメンなのだが、めんまへの歪んだ思いから彼はめんま自体になりたいと思うようになり、女装するようになる。

 かつてもイケメン、今もイケメンというキャラクタでありながら、その歪んだ思いが女装に向くという前代未聞の迷走をする残念なイケメン。ただしインパクトは絶大で、事実上あなるとゆきあつという二本柱があって、視聴者は大きな関心を抱くようになったように感じる。

 彼は今も昔もめんま一筋なのだが、その向こう見ずさにあなるもつるこも振り回されることになる。

 つるこは、ゆきあつ一筋なのだが、ゆきあつはめんまが好きであり、かつあなると意識が通じ合っていた。だから仮にめんまが亡くなってもゆきあつはあなるに惹かれることはわかっており、それでもゆきあつを嫌いになれないキャラだった。過去と現在との大きなギャップは特にない。 

 他、ポッポは小さな体と大きな体というギャップがある。

 そんなギャップを乗り越え、超平和バスターズが再び元に戻り、めんまと本当にお別れをする。極めて基本ラインはわかりやすい。

 ただ、それだけに「ギャップ」の強調があまりなく、なんとなーく元に戻っていった風な印象を受ける部分もあったのが評価をやや下げている。

 あなるは最初から、じんたんに会いに行くためだけに化粧をするほどにじんたんが好きなところからのスタートだし、ゆきあつにしてもじんたんに強いコンプレックスを持っているということはディスコミュニケーションにまで至るレベルではない。

 もっと掘り下げて、さらにディスコミュニケーション状態からのスタートを見てみたかった感はある。何よりつるこもポッポも今ひとつ掘り下げが足りておらず、ポッポは本当に何をしたかったのかすらわからない。

 ただ、最後のあたりは極めて都合のいい展開だけれど、他にまとめの方策が思い付かなかったので、ちょっと色々あるけれどあのままでもいいかなあ、とは思う。

 なんだかもう数話でも入ればもっとよい作品になるんだろうなあと思う部分のある作品だった。