えれんの日記

2014年10月16日 22時30分

僕が初めてスカートを履いた日、お兄ちゃんは僕を。

僕が初めてスカートを履いたのは、こんな冬みたいに冷たい秋の日でした。学校はお休みで親は仕事で、僕はバイトして稼いだ金でこっそり買ったスカートを、自分の部屋でこうやって目の前に広げて、わくわくしてみました。

真っ赤な真っ赤な秋みたいなスカートでした。

寒かったので、脚の鳥肌とか、膝がかさかさに白かったこととかを、覚えています。

本当は毛も処理してクリームを塗り込んで、僕はきれいになりたかったのですが、僕にはそんなことは出来ませんでした。僕は男だからです。男はそんなことしません。絶対に。

僕が初めてスカートを履いた日は、静かな静かな秋の日でした。

鏡に写してみても、似合ってるんだか似合ってないんだかよくわからなくて、でもその女性らしいシルエットに感動して、嬉しくて、恥ずかしくて、ほっとしました。

くるりと回ってみたりしました。

裾を拡げてみたりもしました。

正座を崩したような、いわゆる女座りもしてみました。






なんでその日に限ってそんなときに限ってお兄ちゃんが僕の部屋に来たのかはわかりません。

いつもは引き込もって自分の部屋から出てこないくせに、たまに出てきたとしても逃げるように部屋へ帰っていくくせに、なんでこのとき僕の部屋にノックもせずに来たのかは僕にはわかりません。

でもわからないことなんてほかにもいっぱいあるけど、たとえば、じゃあなんでそのあとお兄ちゃんは僕の手を引っ張って頭を掴んで固いフローリングの床に押し倒したの、とか、なんで僕の身体に触ったの、とか、なんで、僕の脚を無理矢理広げて痛いことしたの、とか、でも一番わからないのは、怖くて声が出なくて目も開けられなくてただ息をひたすらとめようとしてた僕はあのとき、まあでもいつかはこうなるんじゃないかって思っ

まあ、そんなことはどうでもいいんだけど、僕が初めてスカートを履いた日は、今日みたいに冬みたいな冷たさの秋の朝で、赤いスカートは僕の血でもっと秋色に染まって、汚くなったので、捨てました。





という小説。

うさにゃん@太郎

冒険する道は人それぞれ。振り返った時の色んな思ひ出の中、一番不思議で、一番理不尽で一番こっぱずかしくて、一番ショッパイのが子供の頃の冒険にまつわる思ひ出なのは同じかも。苦笑いかもだけど、振り返って笑える様になるよね。

2014年10月16日 22時35分