ねことらの日記

2014年08月25日 23時13分

はちがつの熱帯魚/

高温注意報。コンビニで買ったアイスコーヒーのカップからとうめいなしずくがたれていた。


ゆるやかなカーブ。それに沿うようにながくながくガードレールがつづいている。


しめり気をふくんだクラクション。幹線道路のうえにはメタリックな魚群が行き交っていて。とおくからせまる市バスは、蜃気楼の海をおよぐ巨大な熱帯魚だった。



息をととのえても、すこしくるしくなる。過ぎ去ろうとしているはちがつが、いま目のまえで乱反射しているみたいで。








/とじていくよる、ひらかれていくあさ/そのどちらにもいりぐちもでぐちもない/くぐりぬけるだけで/


/ぼくらはたしかめあい、かばいあい、きずあとだけをのこした(それはようみゃくのようにほそく、ぼくらのひふをながれて)/


/そして、そのきずあとひとつひとつにちゃくしょくしていく/あざやかなカーマイン、すみわたるコバルトブルー/


/どんないろでもよかった/いくえにもぬりたくられた、ぎそう/そして、ぼくらは、そのはだをろしゅつすることをこばんで、いく/









夏の残火。市バスの窓からみえる景色は街の放射熱でゆがんでいる。TSUTAYAの看板、学校の外壁、並走するタクシー、放置自転車。それらは、キラキラしていて、絶え間なくて、いくら積み重ねてもどこへいくこともない、ひとなつのガラクタだった。



きみはたぶん、この夏のどこかで息をしている。わらっているかもしれない。フタのない箱のような季節だ。いつでも逃げ出せるのに、行き場もないのに、とどまってしまうね。



しめり気をふくんだクラクションがきこえる。過ぎ去ろうとしているはちがつが乱反射して、すこしくるしくなる。とうめいなしずく、キラキラして、絶え間なくて、そこにいくつもの面影をかさねながら。どこへいくこともない、熱帯魚のなかで。








/すいおんはじょうしょうし、きせつはゆるやかに、じょうはつしはじめる/さいせいのじゅんびをはじめる/ぼくはくりかえしめざめる/はちがつのあさに/