2014年07月01日 22時35分
攪拌することでしか証明されない夜
洗濯機のおと。ぐるぐるまわりながら、よるをまるごと攪拌するみたいに。たぶん中心はしずかで。
机にはてきすととふでばことルーズリーフが何枚か、コンビニのサラダの容器とネスカフェのマグカップがあって。ソファでねむるきみと。最近、つうしんでしかくのべんきょうをしてるらしい。
ぼくはマーカーでルーズリーフの端に、いくつもの点や線をかいた。いみをもたない記号。なによりいちばんキレイだと思うから。きみはおこるかもしれないけど。蛍光イエローの暗号。
えがききれないものは置いてきた。ゆるやかにそこなわれてしまうものばかりで。のこされた感触だけが、ぼくのなかの凹凸にこびりついている。もうふれることはできない。
ひとつひとつをていねいに弔うことはできなかった。はしりさる影、飲みかけのコーラ、さびたハブステップ、ファミレスのわらいごえ、やぶられたやくそく、もうどこにもいない誰か。
すべてはひかりのパウダーになって、ちへいせんにむかっていく。ただしい飛びかたで。あおじろい朝焼けをあびながら。あたらしい日付をきざむ、しずけさの水のなか。
ちらばったルーズリーフを整理して、カップを流しにはこぶ。そして、あたらしいコーヒーをつくって。ささやかな夜明けのぎしき。
きみがめざめるのをちゃんとまってるから。そのときは、だれもわるくないんだよって、言ってほしい。
なんども、なんども。ぼくではない、きみの声で。
ねことら
ふたたびテキストの罠
2014年07月01日 22時36分