もつにの日記

2012年05月30日 15時02分

蟷螂の鏡 結

タグ: もつに 怖い話 蟷螂の鏡

数年後、青年の作った離れの傍に小さな小屋が建ちました。
それから毎年、いくつもの小屋が増えていきます。
数年もすると集落の様になり、山の村の離れ村と呼ばれるようになりました。
そして一部の者は、蟷螂女の離れ村と呼びました。


霊能者の敷いた苔を学者が調べたところ、それは苔の様に見えるが、かつて禁忌とされ全て焼かれた麻薬成分を持つキノコに似た菌類だといいました。
その菌は周囲の環境を模して山菜に良く似た味と形のキノコを生やします。
そして食べた人の脳に寄生し、人間の脳の活動が衰え始めた所で強力な麻薬成分と神経毒で身体を操り自分の住みよい場所まで歩かせるとそこで完全に殺し、その身体を栄養源として自身を増やすのだといいます。

霊能者はその麻薬成分を摂取させる事でトランス状態に陥らせ、村人を操り
そして自分自身、そして娘さえも操っていたのです。
霊能者は自分の死期を悟ると娘と一緒に大きな鏡を覗き込みました。
トランス状態の娘に、霊能者は独特の話法で自分の過去を語り聞かせます。
まるでお前は私なのだと言い聞かせるように。

そうして娘は霊能者の精神をコピーされ、若く美しく力を持った青年と一緒になり、村を離れました。
そこで娘を産み、青年に菌を過剰に摂取させ菌の苗床にするとまた別の男を誘い、娘を産み、苗床に…彼女等は暗示で娘しか産まない身体になっていました。
男を食い、産み、増え、鏡で精神をコピーして、まるでその菌そのものの様に増え続ける。

その事実を知り恐れた国が全てを焼き払い無に帰すまで、女は増え続け同じ顔で微笑んでいたといいます。

秘密裏に殺され、焼かれた女達の遺体は99体を数えました。
しかし本当に全て葬れたかはわかっていません。
女達は自らをイチ、フタツ、ミツと数字の様な名前で呼んでいた事が分かっていますが
周囲の村からの証言でモモという少女が居たことが分かっています。


モモ、漢字にすると百だとしたら…