もつにの日記

2012年05月30日 14時17分

蟷螂の鏡 破

タグ: もつに 怖い話 蟷螂の鏡

ある時山の村に一人の美しい青年がやってきました。
青年は実家が佃煮屋を経営していて、山の村の行商の卸した山菜に興味を持ち、是非栽培しているところを見たいというのです。
山の村の村人達は珍しい客人に喜び、宴を催しました。
しかし青年が栽培している所を見せてくれといっても村人達は頑なに「ほかの所でマネをされたら俺達はもう食っていけなくなる」と断ります。
青年はがっかりしましたが、仕方ないと割り切り宴を楽しむことにしました。
そして夜、青年は村で一番美しい女をあてがわれ満足して帰っていきました。

一月も経たない頃、青年はまた村に来ました。
目の飛び出る程の大金をもって、再度栽培している所を見せてくれと懇願しに来たのです。
街に戻った青年は日を追うごとに栽培所の秘密が気になりいてもたっても居られなくなり、眠れなくなるほどだったそうです。
村人達は、青年にこういいました。
「村の人間にしか見せる事はできねえ、お前が村の女と結婚してこの村に骨をうずめるなら見せてやる」
青年は諦めて街に戻りましたが、程なくして耐え切れなくなり、村に婿入りする事にしました。

青年は村に入り、栽培所の秘密を聞くと家に篭り、ほとんど外へ出てこなくなりました。
そして青年は村から離れた山の更に険しい所に離れを作り、妻とそこで暮らすようになったそうです。
村の男達は青年が裏切ったとして断絶し、もしも街に帰ったら村人全員で制裁すると宣言しました。

しかし青年が街へ帰ることはありませんでした。
青年と一緒になった村一番の美女、彼女は傍らでにこりと微笑みます。
そのお腹には子供がいました。