今、ぼくは自分でも笑ってしまうくらい滑稽な体験をしている。閉店間際の銀行。閉じかけのシャッター。そこに、滑り込むぼく。
 そして、こうして今、ぼくは銀行強盗をしている。ぼくたちの手際は惚れ惚れとするようなものだったに違いない。手にした銃のグリップで防犯カメラを叩き壊し、行員と残りわずかな客を縛り上げ、目隠をして、携帯電話を取り上げる。通報の隙を与えない完璧でスマートな銀行強盗だったはずだ。まあ、ぼくはモデルガン片手に立っていただけなのだけども。
 そもそも、ぼくはついさっきまで、どこにでもいる何のとりえもない、ただの大学生だったはずだ。なのに、どうしてこうなった!