朝はパン パンパパン

支えた拍子に、パンのものとは別の、なにかいいにおいがした。春先に咲く花のような、爽やかであまいにおい。
「あっ、ありがとうございます」
パンのひとが慌てて僕から離れ、紙袋を抱いてぺこりと頭を下げた。倒れかけた不幸な中学生も、すいませんと頭を下げている。
気にしないでと僕とパンのひとが同時に言うと、中学生は少し笑って仲間内に戻った。パンのひとは真剣な顔で紙袋を覗いて、朝の楽しみが無事か確認している。
「大丈夫でしたか、パン」
「はい、お陰さまで」
笑顔で答えてから、
「なんで中身がパンだって知っているんですか?」
パンのひとはきょとんとして聞き返してきた。