朝はパン パンパパン

あの子が男と一緒に歩いているのを見た。私も見た見た、年上っぽい金髪のやつ。え、なんか意外。駅前のラブホに入ってくの見たって、隣のクラスの子がさ。
4月の終わりごろ、そんな噂が飛び交うようになった。私のところにわざわざ真偽を確かめに来た子もいたけど、答えられることはなかったし、知っていたとしても答える気はなかった。
でもそれで、私はあの子のことを、噂を否定できるほど知らないことに気がついた。噂で聞く程度のことも知らないのだと、気づかされた。
学校で一番仲がいいのも、あの子のことをわかってるのも私だと思っていたのに。やけに悔しくて、何も話してくれないあの子を恨めしく思った。