「静かな湖畔の森の影から、という童謡があるだろう」
ふと思い出したように緒方さんが言いました。
「ありますね、カッコウやフクロウが鳴く童謡です」
かな子ちゃんが小さく口ずさみました。
「そう、それだ。幼いころの、まだ純真無垢で神童と呼ばれていた私は、静かな股間の森の影からと勘違していたのだ」
「はあ」
「静かな股間の森の影…ひょっとしてこれは、いやらしい歌なのか!?と、あらぬ妄想をし、ちょっと興奮したものだ」
子どものころの緒方さんは存じませんが、その話を聞くと今とそんなに変わらない気がします。
「純真無垢でも神童でもなさそうです。ただのむっつりすけべです」